1. 精子細胞におけるTPCLの産生機構の解明:これまでにTPCL はミトコンドリアには存在せず、小胞体/MAM に存在することを明らかにしている。興味深いことに、ミトコンドリア内のカルジオリピン合成酵素と類似の活性ドメインを持つ機能未知のMAM局在膜タンパク質Tmem269が伸長精子細胞特異的に発現していることを最近見出している。iGONAD法により当該分子 の欠損マウスを作製したところ、欠損マウスの精子形成に異常はみられず、またTPCL量にも変化がなかった。一方で、精巣のMAM画分には他の臓器にはみられないカルジオリピン合成活性が存在することが明らかとなった。 2. TPCLの精子形成における作用メカニズムの解明:これまでの解析から、TPCLが減少したマウスではCullin3活性化不全によるResidualBody排出異常を引き起こすことが示唆された。Cullin3の活性化にはCullin3複合体の構成因子やCullin3の制御因子が関わる。これらCullin3 関連タンパク質のTPCLが減少したマウス生殖細胞におけるMAM 局在を同様に調べた結果、Cullin3の活性化に関わる制御因子が減少していることを明らかにした。 3. 精子形成に特徴的な脂質の同定とその作用の解明:マウスの主要臓器を対象としたリン脂質リピドミクス解析から、精巣にはTPCL 以外にも特徴的なリン脂質分子種が存在していることを見出している。そこで、精子形成に特徴的なリン脂質分子種のさらなる探索・同定をおこなう。本年度はphosphoinositideの異性体を超臨界クロマトグラフィーで分離する系を作成し、精巣には他の臓器にはみられない飽和型のphosphoinositideが存在することをみいだした。
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