研究領域 | 配偶子インテグリティの構築 |
研究課題/領域番号 |
21H00235
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
嶋 雄一 久留米大学, 医学部, 教授 (80425420)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精巣 / 精子形成幹細胞 / ライディッヒ細胞 / 下垂体 / ゴナドトロピン |
研究実績の概要 |
胎児期の精巣では、始原生殖細胞が精巣へ遊走し定着する。さらに新生仔期の精巣では、始原生殖細胞が、その性質を変えるとともに精細管の辺縁部へ遊走し、将来の精子形成を担う精原細胞へと変化する。本研究では、新生仔期の精巣で起こる始原生殖細胞から精原細胞への変化と、同時期に起こる一過性の視床下部-下垂体-性腺軸の活性化(mini-puberty)との因果関係を明らかにすることを目的としている。 上記の目的のために、今年度、下垂体ゴナドトロピン産生細胞の機能が低下したマウス、および精巣ライディッヒ細胞の分化を阻害したマウスを用いて、生後10日目の精巣組織から細胞を調製し、単一細胞トランスクリプトーム解析を行なった。その結果、新生仔期の精巣に存在することが知られている各種細胞(ライディッヒ細胞、セルトリ細胞、血管内皮細胞、マクロファージ、始原生殖細胞や精母細胞を含む精細胞)のクラスターが検出された。しかし、既知の細胞種のマーカー遺伝子を2つ以上含むクラスターも検出されたことから、細胞の乖離が不十分であった可能性が考えられた。そのため、データ処理によって2つ以上の細胞を含むシークエンスデータを除去する条件を検討中である。これまでの解析から得られた結果から推測できることとしては、下垂体ゴナドトロピンが低下したマウスでは、正常マウスとの顕著な違いは認められなかった。一方、精巣ライディッヒ細胞の機能分化を阻害したマウスにおいて、精原細胞の特徴を示す細胞数が減少していたことから、胎児期から新生仔期にかけてライディッヒ細胞の分化阻害が、精原細胞の形成に対して負の影響を及ぼす可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度の途中で、所属機関の変更に伴い、いったん実験動物(マウス)を全て凍結保存して輸送する必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
年度途中での移動に伴い、実験動物の凍結・輸送・復元に要した期間は実験を行うことができなかった。現在はマウスを再び復元し、実験を行える状態になっている。 今年度の単一細胞解析のデータについては、データ処理の条件を検討することにより、より詳細な知見を得られないかを検討中である。今後は、まず細胞の乖離条件を見直し、良質のデータを取得することを目指すとともに、ソーティングにより単一細胞の懸濁液を準備する方法や、核を調製して解析する方法を検討する予定である。これらの結果をもとに実験条件を定めた上で、繰り返し実験を行なって、今年度の結果を確認する。さらに、今年度は遺伝子発現解析のみを行なったが、今後は同一の細胞から遺伝子発現とクロマチン構造を同時に解析する実験も行う予定である。この解析により、細胞間の性質の違いを遺伝子発現のみならず、遺伝子発現の違いを生み出すクロマチン構造の違いとして可視化することが可能となり、より詳細な細胞種の分類が可能となる。
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