2021年度に作成したVasa-tdTomato-Puro系統を用いて胚由来始原生殖細胞のin vitro培養を試みた。数日は安定してPGC様細胞が増えるもののその後は細胞死が起こることが判明した。胚、幼虫、成虫からそれぞれ単離、培養も試みたが、一時的に細胞が増加するものの、細胞株として確立することは困難であった。以上の課題は研究開始当初から想定されていたことから代替となる細胞株の樹立も並行して進めた。はじめに、生殖細胞と同様の遺伝子発現プロファイルが観察されるL(3)mbt遺伝子ノックアウトハエに着目した。L(3)mbt遺伝子ノックアウトハエでは、脳などの体細胞株で顕著に生殖細胞由来遺伝子が発現すること、さらに、脳においてTumor様の細胞塊が形成されることが報告されていた。この知見をもとに、L(3)mbt遺伝子のパートナー遺伝子を探索し、CG2662(Lint-Oと命名)を同定した。Lint-O遺伝子ノックアウトハエでは、L(3)mbt遺伝子ノックアウトハエと同様に、脳において、生殖細胞で本来特異的に発現する遺伝子群が異所的に発現すること、さらに、Tumor様の細胞塊が生じることを見出し、報告した(Yamamoto-matsudaら)。このtumor様の細胞塊を単離し、新たな培養株の作成を試みるため、Lint-O変異を持つハエと、Vasa-tdTomato-Puroを発現するノックイン系統との掛け合わせを行い、系統作成が完了した。この系統を用いて、今後、新規生殖細胞様培養細胞が樹立できることを期待している。
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