研究領域 | 遺伝子制御の基盤となるクロマチンポテンシャル |
研究課題/領域番号 |
21H00241
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 哲也 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任准教授 (40610027)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | エンハンサ / eRNA / 相分離 / 海島構造 / 転写ダイナミクス / 核小体 / 核ストレス体 |
研究実績の概要 |
エンハンサが転写されて生成されるeRNAが転写凝集体を安定化することが実験的に示唆されている。齊藤グループの研究対象であるエレノアクラウドの理論化を目指して、2021年度は、前期の公募研究で私が構築した、転写サイトが単一である場合の凝集体形成の理論を拡張して、DNA上に転写サイトが複数ある場合の凝集体形成のモデルを構築した。また、核ストレス体(nSB)の形成する海島構造を予言する理論を構築するために、類似した構造を持ち、共通する形成原理を持つと考えられる核小体のモデルを構築した。核小体で生成されるリボソームRNA前駆体(pre-rRNA)の転写を抑制すると、核小体のミクロ相(FC)が融合して1つの大きな凝集体となる。転写は核小体FCの表面で起こるため、新生pre-rRNAはFCの表面に局在化する。新生pre-rRNAはフィブリラリンと複合体を形成し、FCの表面にDFCと呼ばれる相を形成する。そこで、私は、FC表面に局在化した新生pre-rRNA複合体の間の相互作用を考慮に入れて、核小体FCのサイズ制御機構のモデルを構築した。その結果、新生pre-rRNAによって発生する表面圧と表面張力のつり合いによって決まる最適なFCのサイズがあり、転写速度を大きくするとFCのサイズが小さくなることが分かった(Yamamoto et al. bioRxiv, 2021)。分裂酵母のヘテロクロマチン形成・維持の理論構築にも着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前期にすでに構築した山崎講師との共同研究は順調にすすんでいるが、新しく構築する予定であった木村班と斎藤班との共同研究はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
今年の領域会議がオンサイトで行われることになったので、木村教授と斎藤教授と十分な議論をして、最新の実験の情報を考慮に入れてモデルの詳細を詰め、遅れを取り戻す予定である。また、2021年度には、eRNAの生成とBRD4の凝集による相分離凝集体形成のモデルを構築したので、その解析を行い、転写ダイナミクスを理論的に予言する。このモデルでは、凝集体内のPol IIの個数の時間発展をマスター方程式で取り扱う。このモデルを解析することによって、転写ダイナミクスの予言を行う。また、P-TEFbによるPol IIのリン酸化のキネティックスを取り扱い、凝集体形成がリン酸化の反応速度に与える影響を解析する。さらに、RNAによるヌクレオソームの不安定化を考慮に入れて、凝集したクロマチンがオープンになる転移を理論的に予言する。
|