公募研究
本年度は、生体内ニューロンの発生過程の一つである神経活動依存的な分化における、クロマチン構造・核の形態変化に着目して研究を進めた。ニューロン可塑性は、外界からの刺激に応じてその性質を変化させる能力のことであり、私たちが覚えたり忘れたりするときのベースとなるメカニズムである。興味深いことにこれまでの研究において、ニューロンが刺激に応じて遺伝子発現パターンを変化させるときに、核の形が大きく変形して陥入することが知られており、これが遺伝子発現の応答性に寄与することが示唆されていた。私たちは、生体内のニューロンにて生理的な刺激でも同じことが観察されるかを調べるために、視覚刺激に応答する視覚野ニューロンの核の形態をタイムラプスイメージングにて調べた。その結果、高い時間解像度で核の形態変化を捉えることができ、若齢ニューロンでは15-20分の間に核が陥入することがわかった。一方、老化に伴ってニューロン可塑性は低下するが、老齢ニューロンでは核の変形は観察されなかった。またこのとき、核のかたさを原子間力顕微鏡で調べたところ、老齢ニューロンの核は若齢ニューロンよりかたくなっていることがわかった。この結果から、核がかたくなることでフレキシブルに核が変形できなくなったことが、老化に伴う遺伝子発現応答性の低下、ひいてはニューロン可塑性の低下の原因である可能性が示唆された(Frey et al., bioRxiv, 2022)。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
bioRxiv
巻: - ページ: 086330
10.1101/2020.05.14.086330
The FASEB Journal
巻: 36 ページ: e22662
10.1096/fj.202201002rr
巻: - ページ: 504704
10.1101/2022.08.22.504704