線状染色体の末端に存在するドメインであるテロメアに隣接してサブテロメアと呼ばれるドメインが存在する。サブテロメアは、長大な重複配列が存在する等の実験手法的困難から、その機能がほとんど明らかにされてこなかった“染色体の未開の地”である。これまでに、分裂酵母のサブテロメアではヘテロクロマチンやKnob凝縮構造が形成されることを明らかにしてきた。しかし、サブテロメアとユークロマチンの境界を決定するしくみや進化過程におけるサブテロメアのクロマチンや遺伝子発現の変化についてはほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、特に生物の進化に着目し、サブテロメアのクロマチンポテンシャルの制御機構を解明することを目的として、1)分裂酵母のサブテロメアとユークロマチンの境界はどのようにして決定されているのか? 2)分裂酵母の進化(変化)の過程でサブテロメアのクロマチン状態や遺伝子発現はどのように変化してきたのか?を明らかにすることを目的とした。まず1)については、サブテロメア領域を少しずつ欠失させた株を作製し、ヘテロクロマチンの伝播がどこで止まるのかを解析したところ、すべてのサブテロメアでヘテロクロマチンやKnobの伝播を止める機構があることが示唆された。また、その機構に関わる遺伝子のスクリーニングを行い、ヒストンのターンオーバーなどに寄与する遺伝子を同定することに成功した。現在、それらの遺伝子の詳しい機能について解析中である。また、2)については、野生株を様々なマイルドなストレス条件下で継代培養し(30週)、サブテロメアを含むゲノムDNAの変化を解析したところ、特に高温処理やDNA複製阻害剤処理をすると、サブテロメアが変化しやすいことがわかった。また、様々なストレスに対する感受性も変化しており、実験室で分裂酵母を進化させることに成功した。
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