エピジェネティック制御の根幹に関わるヌクレオソームは、従来、ヒストン8量体にDNAが巻きついた構造と考えられてきた。近年、ヒストンの構成とDNAの巻きつき具合、および他の因子との相互作用といった動的な変化が注目されてきているが、それらが細胞内の証拠によって十分に裏付けられているとは言い難い。本研究は、細胞内で転写と関連して生じる特殊なヌクレオソーム構造の証拠を塩基対解像度で検出し、それをゲノムのコンテクストで理解することを目指している。 高解像度にマッピングしたヌクレオソームについて、そのDNA配列の特徴を詳細に解析した。ヌクレオソームの検出頻度とDNA配列には密接な関係があり、巻きつくDNAの相性がヌクレオソームの細胞内安定性と関連することが示唆された。147 bpのヌクレオソーム座標上において極端に嫌われる短い塩基配列を発見した。研究協力者および領域研究者の協力を得て、試験管内でのヌクレオソームの挙動はわずかな塩基の違いで重大な影響を受けることが判明した。 転写領域のヌクレオソームの非対称性について、DNA配列の観点から詳細な検討を行った。興味深いことに、タンパク質をコードする酵母の遺伝子には明確な傾向があり、ヌクレオソームの配置はDNA配列と関連することが判明した。特に、プロモーター側半分とターミネーター側半分ではヒストンとDNAの相性が異なり、先に転写が終了するプロモーター側はより高い相性でヒストンに巻きつくことが示唆された。この傾向はマウスのエキソンでも見られ、真核生物に普遍的であると考えられる。
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