研究領域 | 遺伝子制御の基盤となるクロマチンポテンシャル |
研究課題/領域番号 |
21H00256
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
原 裕貴 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (80767913)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 核内クロマチン密度 / 核内構造体 / 無細胞再構成系 / アフリカツメガエル / 核サイズ |
研究実績の概要 |
本年度は主に、核内クロマチン密度と核サイズの相関関係の理解、核サイズ制御に関わる新規制御機構の解析、核内構造体の構成に関わる因子が核サイズ制御に与える影響の解析を行った。 まず、アフリカツメガエル卵細胞質抽出液を用いin vitro再構成した核に対して、核内クロマチン密度を操作する実験条件を探索した。その過程で、核内クロマチン濃度や核サイズの制御に影響を与える因子として、卵細胞質に豊富に含まれる卵黄顆粒に着目し、解析を進展させた。その結果、間期核のサイズ増大過程において、核周囲に蓄積する卵黄顆粒が物理的障害としてはたらき、核サイズの増大を抑制することを発見し、この成果について論文として発表した。 また、核内クロマチンの密度の影響を考察するために、異なる生物材料であるアフリカツメガエルやその他両生類、爬虫類などの赤血球の測定データを収集し、核サイズとクロマチン量の関係について比較解析を行った。その結果、クロマチン密度が核サイズ制御に与える影響には種特異性が存在することを明らかにし、その成果に関して論文発表した。 核内構造体の構成に関わる因子の解析については、アフリカツメガエル卵細胞質抽出液を用いて、その因子の分解を促す実験系を確立した。その因子が核サイズ制御、核内クロマチン構造、ならびに核内クロマチン密度を制御する予備的データを得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.(当初計画)核内クロマチン密度の操作法の確立と核内構造体への影響の理解: 核内クロマチン密度や核のサイズを制御する新規機構を解明し、その成果を論文として発表することができた。今後も、別の角度からのクロマチン密度の操作法を確立することができれば、実験手法ならびに研究成果として、更なる進展が期待できる。また、当初計画しなかったが、核内クロマチン密度の影響を理解するための異なる生物材料を用いた比較解析へと研究が発展し、その成果を論文発表することができた。 2.(当初計画)核内構造体の形態操作法の確立:無細胞系を用いた核内構造体の制御を可能とする候補因子の摂動実験に成功している。その候補因子により核内クロマチン密度を制御する仕組みを示す予備的データを既に得ており、今後その制御機構の全容解明が期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
核内構造体の形態操作法の確立に関して、予備的データを得ている、核内構造体の形態制御に関わる候補因子のはたらきを集中的に解析する。無細胞再構成系の特徴を活かし、候補因子の阻害や、他生物種ホモログとの置換実験を行い、核内構造体や核サイズ・クロマチン構造への影響の解析する。また、ツメガエルの胚発生過程での候補因子のはたらきの評価を行うことで、無細胞系で得られた成果を実際の生体内でのはたらきの理解へと発展させる。これら内容は、研究責任者の研究室所属の学部生1名、新たに雇用する技術補佐員1名とともに解析を進める。
|