研究実績の概要 |
本研究は、休眠している分裂酵母の細胞(=胞子)が休眠を打破して目覚める際に、どのような分子機構が働いて目覚めるのかを解明するものである。具体的にはそのなかでもDNAからの遺伝子発現がどのように変動するかに焦点を当てて、目覚め時にどのような発現状態が見られるのか、またその中から、細胞の目覚めに重要な役割を担う遺伝子をあぶり出すことを目指してい本年度は染色体のクロマチン状態がどのように変動するかをATAC-seq法により追究している。前年度の時点で実施のための条件検討を実施していたATAC-seq法(クロマチンにおけるヌクレオソームの開閉状態を調べる生化学的な手法とNGSによる解析を組み合わせた方法)について、実験実施条件をある程度確定させた。さらに本研究ではこれを単一細胞レベル(シングルセルレベル)で実施するための条件を検討した。再現性の高い条件を決定するためには時間を要しているが、ある程度のクオリティコントロールはおこなえており、今後は実験の実施に進む。 本研究の実施過程において、目覚めの過程で機能するのは必ずしもタンパク質をコードするmRNAのみではなくて、タンパク質をコードしないノンコーディングRNAもまた機能を果たす可能性があることを想定した。しかしながら、ノンコーディングRNAはその機能が明確に解明されているものはほとんどなかったため、どのノンコーディングRNAに注目するかの選択の場で策が尽きてしまう。そこで別途、分裂酵母データベースに登録されている約1,800種類のノンコーディングRNA遺伝子のなかから、機能を持つ未知のものを発見するための遺伝学+情報科学に基づくスクリーニングを実施した。実際にひとつ機能性ノンコーディングRNAを発見でき、科学誌上に論文発表した(Ono et al. Nucleic Acids Research, 2022)。
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