研究領域 | ケモテクノロジーが拓くユビキチンニューフロンティア |
研究課題/領域番号 |
21H00272
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西山 敦哉 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (50378840)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DNMT1 / タンパク質ーDNA架橋 / SUMO / ユビキチン / DNAメチル化 / DNA複製 |
研究実績の概要 |
DNMT阻害剤として用いられる低分子化合物5-aza-2-dC(デシタビン)はDNA複製に伴いゲノムDNAに取り込まれるとDNMTと不可逆的なタンパク質-DNA架橋構造を形成し、その後DNMT1のSUMO化を介したDNMTの分解を誘導する。しかしながら、DNMT-DNA架橋がどのようにSUMO化を誘導するのか、またSUMO化されたDNMT1がどのような修復経路を介して細胞から取り除かれるのかは未だ明らかでない。本研究はDNMT1による維持DNAメチル化を試験管内で再現するツメガエル卵由来の無細胞系を用いて、DNMT1-DNA架橋を制御する分子機構を明らかにすることを目指した。まず無細胞系に5-aza-dCTPを加えると、DNMT1が強くクロマチンに集積し、高度にSUMO化されることを示した。これは、無細胞系において、DNMT1-DNA架橋形成とDNMT1のSUMO化を再現可能であることを示している。次に、5-aza-dCTP添加に伴いクロマチン上に集積する因子について質量分析を用いての網羅的な同定を行い、複数のクロマチン因子を同定することに成功した。次に、同定された因子の中でSUMO経路依存的クロマチン結合を示し、SUMO結合モチーフを持つDAXXに注目して、解析を進めた。その結果、DAXXが5-aza処理に伴い、クロマチンに強く集積し、DNMT1-SUMO化を制御する因子であることを強く示唆する結果を得た。現在、DAXXの作用機序についてさらに解析をすすめるとともに、DNMT1-SUMO化を担うE3SUMOリガーゼの探索を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、無細胞系におけるDNMT1-DNA架橋の解析系の確立、またその制御因子の同定を目的として研究を進めた。その結果、5-aza-dCTP処理に伴うSUMO化DNMT1のクロマチンへの集積が無細胞系においても観察されることが確認された。また、5-aza-dCTP処理に伴い、クロマチンに特異的に集積するタンパク質を複数同定することに成功した。そこで、SUMO結合モチーフをもつDAXXに注目してさらに解析を進めた結果、DAXXがDNMT1のSUMO化に重要な役割を果たすことが明らかとなりつつある。以上の結果から、現時点での進捗は順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、DAXXによるDNMT1-SUMO化制御の分子機構を明らかにする。DAXXの様々なドメイン変異体を作成し、DNMT1-SUMO化やクロマチン局在に必要な領域を明らかにする。また、DAXXノックアウト細胞を作成し、デシタビン感受性やDNMT1の分解を指標にDAXXによるDNMT1-SUMO化制御の重要性を明らかにすることを目指す。また、DNMT1のSUMO化を担うE3SUMOリガーゼを同定するために、DNMT1複合体のアフィニティ精製や近位ビオチン標識法を用いたDNMT1結合タンパク質の同定に取り組む。
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