研究領域 | ケモテクノロジーが拓くユビキチンニューフロンティア |
研究課題/領域番号 |
21H00273
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺井 琢也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任准教授 (00508145)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ユビキチン / 進化分子工学 / タンパク質分解 / cDNA display / 人工抗体 |
研究実績の概要 |
本研究では、ポリペプチドの進化分子工学を用いてユビキチン・プロテアソームシステムの更なる理解と制御を目指している。具体的には、DNAと連結したペプチドの大規模ライブラリーを用いた試験管内淘汰実験により、ユビキチン化酵素基質ペプチドを網羅的に同定する新規手法の開発と応用を目指している。また、内在性標的タンパク質に結合するポリペプチドの探索と分子改変によって、新規タンパク質分解誘導法の開発も目指している。 2021年度はまず「特定のユビキチンリガーゼに選択的に認識・分解されるペプチド配列の同定」に向け、既知のE3基質ペプチドをコードするDNAコンストラクトを作製し、大腸菌ベースの無細胞転写・翻訳系を使ってcDNA displayへと変換した。次にin vitroでモデルE3であるMDM2を含むユビキチン化関連酵素群を添加し、ユビキチン化反応を行ったところ、電気泳動によってユビキチン化反応の進行を支持する結果が得られた。続いてユビキチン化タンパク質を認識する抗体で反応系からのプルダウンを行い、ユビキチン化されたcDNA displayを単離した。定量PCRでDNA量を測定したところ、基質となるはずのペプチドにおいてコントロールペプチドより100倍以上のDNAが回収されたため、実験系の原理検証に成功したと言える。 また「標的タンパク質に結合する新規ポリペプチドの探索」に向け、上と同様にランダム部分を含むペプチドライブラリーをcDNA display分子へと変換した。これを用いてユビキチン・プロテアソーム経路に関与する細胞内標的タンパク質への結合セレクションを行ったが、残念ながら特異性のある結合ペプチドの取得には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」で述べたように、2021年度に中心的に取り組んだ「特定のユビキチンリガーゼに選択的に認識・分解されるペプチド配列の同定」の研究項目については、予定通りモデルE3タンパク質を用いたセレクションの原理検証に成功しており、概ね順調に進展している。しかしユビキチン化反応の再現性に未だ課題があり、各種の条件検討によって原因究明を行ってはいるものの、現在のところ理由は不明である。
一方、「標的タンパク質に結合する新規ポリペプチドの探索」については、当初の計画では初年度に結合ペプチドが得られている予定であったが、実際にはin vitro selectionの結果が良好ではなかった。この点については、ペプチドライブラリーの設計やセレクションにおける技術的な問題が大きいと考えており、次年度に再度挑戦する。
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今後の研究の推進方策 |
「特定のユビキチンリガーゼに選択的に認識・分解されるペプチド配列の同定」については、まず上述の再現性の問題を解決する。具体的には、現在用いている市販の精製酵素ではなく自前で発現精製を行った酵素の利用や領域内共同研究者からの供与、あるいはMDM2以外のE3酵素の利用を検討する。続いて、ランダム化したペプチド配列を用いてスクリーニングを行い、特定のE3に強く認識されてユビキチン化を受けるペプチド配列の情報を網羅的に取得・解析する。 「標的タンパク質に結合する新規ポリペプチドの探索」については、ペプチドライブラリーの設計やスクリーニング手法を見直して再度セレクションを実施する。標的に強く結合する配列が得られた場合には、上記のE3基質ペプチドと組合せることで最終目標である新規タンパク質分解誘導法の開発を達成する。
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