研究領域 | ケモテクノロジーが拓くユビキチンニューフロンティア |
研究課題/領域番号 |
21H00274
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
合山 進 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (80431849)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | STUB1 / 熱ショックタンパク質 / ユビキチン / Alphascreen / Split-TurboID |
研究実績の概要 |
生体内におけるタンパク質の恒常性:プロテオスタシスは加齢と共に低下し、様々な疾患の発症、増悪を誘発する。シャペロン結合型E3ユビキチンリガーゼSTUB1は、N末端のTPRドメインを介してHSP70、HSP90などの熱ショックタンパク質と結合し、ミスフォールドタンパク質の分解を誘導してプロテオスタシスの維持に貢献している。しかし、HSP70やHSP90がSTUB1の機能に及ぼす影響には不明な点が多く、またSTUB1を標的とする薬剤の開発も進んでいない。 そこで本研究では、まずSTUB1とHSP70、HSP90の結合様式を詳細に解析した。その結果、HSP70が特に強くSTUB1と結合しており、さらにSTUB1によるユビキチン化誘導にはHSP70との協調が必須であることが判明した。一方、HSP90はSTUB1のユビキチン化能に対してむしろ抑制的に働いていた。さらに、近接ラベリング手法と2分子分割法を組み合わせたSplit-TurboIDシステムを確立した。このシステムでは、STUB1とHSP70が結合すると、分割されていたTurboID(周囲の分子をビオチン化する酵素)が再生して近接分子をビオチン化する。このシステムを活用すれば、STUB1-HSP70およびSTUB1-HSP90複合体と相互作用する分子を網羅的に探索することができる。さらに、STUB1-HSP70、STUB1-HSP90結合を検出するためのコムギ無細胞AlphaScreenシステム、及びNanobidシステムを確立した 。 以上の結果は、STUB1がHSP70、HSP90と固有の複合体を形成し、それぞれの複合体が独自の役割を担っていることを示唆している。また、各複合体のインタラクトームを解析するための実験システムを確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、STUB1が誘導するユビキチン化において熱ショックタンパク質HSP70, HSP90が果たす相反する役割を明らかにした。また、STUB1とHSP70/HSP90結合を検出するための実験システム(コムギ無細胞AlphaScreen及びNanobidシステム)と、STUB1/HSP70、STUB1/HSP90複合体のインタラクトーム解析を行うためのSplit-TurboIDシステムを確立した。来年度は、これらの実験系を活用してSTUB1の活性を調節する化合物を探索し、さらに各複合体と相互作用する分子の網羅的探索を行う予定である。そのための基盤を確立することができており、研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、以下の研究を計画している。 (1) コムギ無細胞AlphaScreenおよびNanobidシステムを用いて、STUB1-HSP70およびSTUB1-HSP90結合を変化させることのできる化合物を探索する。 (2) STUB1-HSP70およびSTUB1-HSP90-Split-TurboIDシステムを活用してLC-MS解析を行い、各複合体と相互作用する分子を網羅的に同定する。また、それらの情報を基に、各複合体の機能を明らかにする。
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