研究領域 | ケモテクノロジーが拓くユビキチンニューフロンティア |
研究課題/領域番号 |
21H00277
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
鳴海 哲夫 静岡大学, 工学部, 准教授 (50547867)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | タンパク質 / ユビキチン鎖 / ペプチド結合等価体 / 脱ユビキチン化酵素 / 化学プローブ |
研究実績の概要 |
2つのグリシン残基とリジン側鎖からなるユビキチン連結領域がユビキチン鎖の構造や機能を制御する重要な構造因子であることに着目し、本領域を有機化学的に機能化した特殊ユビキチン鎖の化学合成とそれら特殊ユビキチン鎖を基盤とするユビキチン研究を展開した。
-脱ユビキチン化酵素で切れないアルケン型ユビキチンミミックの化学合成:脱ユビキチン化酵素による分子認識に関与するGly75-Gly76ペプチド結合を、水素結合できない(E)-メチルアルケン骨格および(Z)-クロロアルケン骨格に置換したアルケン型ユビキチンミミックの化学合成について検討した。条件を最適化したところ、Fmoc固相合成法によってアルケン型ユビキチンミミックを直線的に合成することに成功した。本合成法は、先行研究で確立した複数のフラグメントを化学選択的に縮合する収束的合成法よりも効率的にユビキチンミミックを合成することが可能である。さらに蛍光偏光解消法によって脱ユビキチン化酵素に対する加水分解耐性を評価したところ、合成したアルケン型ユビキチンミミックは脱ユビキチン化酵素によって加水分解されないことを確認した。
-ユビキチン鎖の閉構造をミミックした架橋型ユビキチン鎖の化学合成:ユビキチン鎖の閉構造を特異的に認識するデコーダー探索用プローブとして、 ユビキチン連結領域の基本骨格を維持したまま、 その一部を共有結合で架橋することで、 ユビキチン二量体の閉構造を人工的に再現したトリアゾール架橋型ユビキチン鎖の化学合成を検討した。側鎖アミノ基がプロパルギル化されたDap誘導体をHMPB-ChemMatrixレジンへと担持した後, Fmoc固相合成法によりペプチド鎖を伸長し, 樹脂上で Huisgen環化条件に付すことで,トリアゾール架橋ユニットの合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機化学的に機能化した特殊ユビキチン鎖として、複数のアルケン型ユビキチン鎖の化学合成に達成し、脱ユビキチン化酵素に対して加水分解耐性を示すことを確認した。また、閉構造ミミックのユニット合成にも成功したため、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
脱ユビキチン化酵素に認識されるユビキチン連結領域をアルケン骨格に置換することで、単量体モデルのユビキチンに加水分解耐性を付与できることを確認した。R4年度では、本コンセプトをユビキチン二量体に拡張したアルケン型ユビキチン鎖をミリグラムスケールで化学合成し、脱ユビキチン化酵素に対する加水分解耐性を実証し、化学プローブとして応用する。
架橋型ユビキチン鎖の合成研究においては、モデルペプチドレベルでは樹脂上で Huisgen環化反応が進行することが確認できたことから、ユビキチン二量体合成に用いるフラグメントペプチドで環化反応を検討し、より効率の良い反応条件を確立する。合成した架橋構造を有するフラグメントペプチドとベット合成しユビキチン(1-45)ペプチドを化学選択的に縮合することで所望の架橋型ユビキチン鎖の化学合成を目指す。
また、本来のユビキチン鎖がとりうる構造や機能を正確に解析できるタンパク質プローブの開発を目指し、イソペプチド結合をアルケン骨格に置換したアルケン型イソペプチド結合等価体を起点としてユビキチン鎖の高次構造に基づく分子認識を制御するケモテクノロジーを創出する。
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