本研究において、様々な疾患に関わる脱ユビキチン化酵素(DUB)であるUSP15を阻害する低分子化合物の探索を行った。先行研究で得られていたUSPファミリーを特異的に阻害する化合物Subquinocinを母核として、東京大学創薬機構が保有する類縁化合物より、USP15に阻害効果を示す化合物の探索を行った。その結果、Subquinocinと類似する化合物UI1および、Subquinocinとはやや構造が異なるナフトキノン誘導体化合物UI2が見出された。また、UI2を培養細胞に処理することで、USP15によって活性化されるIFNシグナル伝達を阻害すること、また標的タンパク質であるTRIM25やMDM2のタンパク質量の減少を誘導した。一方でUI1では培養細胞における顕著な効果は認められなかった。これらの結果を受けて、これまでに未解析だったUI1の類縁体や、UI2と同じナフトキノン骨格を持つ類縁化合物の更なる探索を行った。その結果、in vitroにおいてUI1やUI2と同等の阻害効果を示す化合物を9つ見出した。興味深いことに、これら高い阻害効果を示す化合物は全てUI2と同じナフトキノン誘導体であった。またこれら9つの化合物についてin vitroにおけるDUB特異性評価を行ったところ、USP15への特異性が他の化合物と比較してより強い化合物には、共通する骨格構造が認められた。これらの研究より、USP15への強い阻害効果とある程度の特異性を示す化合物候補を。得ることに成功した。これらの化合物の構造は、USP15に対してより高い阻害効果と特異性を示す化合物の開発において非常に有益な情報を提供する結果となった。
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