研究領域 | ケモテクノロジーが拓くユビキチンニューフロンティア |
研究課題/領域番号 |
21H00290
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
川口 充康 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 講師 (10735682)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PROTAC / 蛍光プローブ / UPS / スクリーニング |
研究実績の概要 |
がん細胞はユビキチン-プロテアソーム系(UPS)が活性化しているため、その阻害はがんの増殖を止めることができる。これまでにUPSを標的にした創薬研究が進められボルテゾミブなどが臨床応用されているが、耐性が生じやすいなど問題点が指摘されている。そこで、UPSの阻害を狙った新たな標的分子の探索が重要だと考えられるが、従来の方法ではその探索は容易ではない。そこで、本研究ではプローブ分子自身がUPSの全てを辿り始めて蛍光性が変化する従来にない蛍光プローブの開発を目指している。これが達成されれば、従来のプロテアソーム活性阻害剤に限らず、この経路に関わる全ての酵素活性・相互作用などを標的とした阻害剤探索が可能になると考えた。その蛍光プローブ開発に関して、具体的にはPROTACの分子内にリジン残基を混在させ、PROTAC分子自身をユビキチン化させることを考えている。これまでに、蛍光分子、リジン残基、ユビキチンリガーゼのリガンドの三者を持つプローブ分子を20個ほど合成し、細胞膜透過性の高い分子の探索を行った。その結果、BODIPYを蛍光団として持ちリンカー構造を最適化した分子で細胞膜透過性が認められた一方で、細胞中でユビキチン化を受けるか評価できるほどの十分な透過性はないことが明らかになった。そこで、更なる分子構造の最適化、添加剤を用いた透過性の改善などを試みた。また、VHLリガンドを持つPROTACsにおいて細胞膜透過性が見られる分子の脂溶性(cLogP値)が明らかにされているため、その情報を参考に新たなプローブのデザイン・合成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、1年目において細胞中でユビキチン化を受ける分子を取得できる予定であったがその分子は取得できておらず、細胞膜透過性が低いという問題点を解決するための検討を行っている状況であるため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでリジン残基を1, 2個に絞った検討を行っていたが、ポリアルギニンが細胞膜透過性を持つ点に着目しリジン残基を8個程度持つプローブ分子を開発し透過性評価を行う予定である。透過性が十分であることが確認できたら、プローブ分子自身がプロテアソームの基質になりユビキチン化を受けるかウェスタンブロッティングにより確認をする。基質となることが明らかにできたら、蛍光団構造にプロテアソームにより分解され蛍光がOFFからONへと変化するスイッチを導入し、細胞系のプロテアソーム活性を検出可能な蛍光プローブを開発する。
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