研究実績の概要 |
もやもや病は東アジアの子どもに多い脳血管疾患で、頭蓋内の限局された領域における進行性・両側性の動脈狭窄および脳血流低下、それにともなう側副血行路(もやもや血管)の形成とそこからの出血を主な特徴としている。病因、病変の形成プロセス、病変が脳底に限局される理由などいずれについても未解明であり、根治療法も確立していない。従来よりもやもや病の発病には民族性あるいは家族性の遺伝要因が寄与することが推定されてきたが、代表者はもやもや病の責任遺伝子としてミステリン(別名RNF213)の分子クローニングを自らの手によって行い(2011)、ミステリンタンパク質の運動性ATPアーゼ活性およびタンパク質ユビキチン化活性の証明(2011, 2014)、生理機能の解明(2015, 2017, 2019)、患者変異による機能異常の検出(2019)など、ミステリンの生理機能とその破綻についての理解を推し進めてきた。ミステリンにはダイニン様ATPアーゼ領域と2つのユビキチンリガーゼドメインが確認されており、本研究課題では前期に引き続いてミステリンのユビキチンリガーゼ活性を中心に、ミステリンの複雑な酵素活性の様態と機能の相関およびその異常による細胞・組織障害(主として血管障害)の実態とメカニズムの解明、ケモテクノロジーによる人工的制御法の開発に取り組んだ。今年度までに、ミステリンの特異なユビキチンリガーゼ活性を主軸とする自己制御メカニズムの詳細およびもやもや病発病の起点がこの自己制御の破綻である可能性について解明を進めることができた。引き続きケモテクノロジーによるこの起点の除去について検証を進めている。
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