研究実績の概要 |
申請者は嚢胞性線維症(CF)原因タンパク質 CFTR delF508 変異体の形質膜分解を促進するユビキチンリガーゼ(E3)RFFL がCF の新規治療標的分子であること(Dev Cell 2018),先行研究で同定したRFFL リガンドがRFFL-CFTR 相互作用(PPI)と delF508-CFTR 形質膜分解を阻害することを発見した.また,CFTR 小胞体関連分解(ERAD)に関与するE3 リガーゼ RNF5, RNF185 ダブルノックダウン(KD)が delF508-CFTR 小胞体関連分解を劇的に阻害し,CF 治療剤の有効性を増強すること,RNF5 及びRNF185 に結合するリガンド化合物を発見した.そこで本研究では,RFFL, RNF5, RNF185 リガンド化合物の作用機序の解明および CF 患者気道上皮細胞等における有効性評価を行なった. CF 患者気道上皮初代培養細胞を用いた短絡電流法解析の結果,RFFL PPI 阻害剤は CF 治療剤により改善された delF508-CFTR チャネル機能をわずかに増強した.従って,本阻害剤は CF 治療薬の増強剤として有望である可能性が示唆された.同定した RNF5/185 リガンドは哺乳類培養細胞において,delF508-CFTR のユビキチン化およびERADを阻害した.本作用は RNF5/185 ノックアウト細胞では減弱したことから,細胞内で選択的に RNF5/185 機能を阻害する結果,ERADを阻害すると考えられた.種々 in vitro 解析結果,RNF5/185 リガンドはE3 リガーゼ活性は阻害せず,基質との相互作用を阻害する可能性が示唆されたが,今後,さらなる作用機序解析が必要である.さらに,同定したRNF5/185 リガンドは CFBE 気道上皮細胞モデルにおいて,CF 治療剤により改善された delF508-CFTR チャネル機能を増強した.以上の結果より,同定した RFFL, RNF5/185 リガンドは delF508-CFTR ユビキチン化を抑制する CFTR 安定化剤として機能し,CF 治療薬の増強剤のシード化合物になる可能性が期待された.
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