公募研究
こころの時間の1つである「過去」は、脳内の記憶システムによって成立している。長い期間の経過やアルツハイマー病などの神経変性疾患によって過去は失われる。しかし過去が失われたように思われた後でも、多くの場合は脳内に記憶痕跡が残存している。そのため、“ふとした瞬間”に過去が回復することがある。しかし失われたように思えた過去がどのような外部要因によって回復するのか、またその外部要因によって過去が回復する神経メカニズムは不明である。そこで本研究は、過去を想起できるか否かを調節する要因を特定し、その要因が想起を調節する神経回路メカニズムを解明することを目的として行った。マウスに音と報酬の古典的条件づけ課題に取り組ませた。音を一定時間提示した後に報酬としてスクロース水を与えた。条件づけ初期では音を提示してもマウスの行動は変化せず、スクロース水を与えると、スクロース水が出るポートを高頻度に舐める行動が観察された。この条件づけを繰り返し行うと、音を提示しただけでポートを高頻度に舐める行動が観察された。こうしたマウスの行動の変化から、マウスが音と報酬の関係性に関する記憶を形成し、音を再び提示したときに記憶を想起したことがわかる。こうした一連の記憶課題の中で神経活動の変動を測定するためにファイバーフォトメトリー法を用いた。これまでの研究からヒスタミン神経系を薬物で活性化すると記憶の想起が促進することを示してきたため、ヒスタミン神経の活動を測定した。ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)のプロモーター下でCreリコンビナーゼを発現するHDC-Creマウスの結節乳頭核に、Cre依存的に蛍光カルシウムセンサーを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)を注入した。その結果、記憶課題と関連したヒスタミン神経の活動変動を捉えることができた。こうした活動変動が記憶想起の調節に関与している可能性が考えられる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 12 ページ: 7015
10.1038/s41598-022-11032-y