展望記憶は、後に実行すべき意図を適切なタイミングで自発的に思い出す未来の記憶である。し忘れ、アクション・スリップを防ぎ、約束を守る、遅刻をしないといった展望記憶を成功させることは対人関係において重要な能力であり、その発達は子どもの社会的自立に関わる。しかし、発達期における展望記憶の脳内メカニズムは調べられておらず、その検証が期待されている。本研究の目的は、小中学生の展望記憶課題に関わる機能的脳結合から、短い時間窓の間の変動性を時間的結合動態(ダイナミクス)とし、課題に成功する子と失敗する子を比較することで、発達期における展望記憶の成功に関わる動的脳内メカニズムを明らかにすることであった。 ほぼ計画通りに研究を遂行し、108名の子どものデータを収集し、成果を国際学会及び学術誌において発表した。暦年齢ではなく、ワーキングメモリ、実行機能が子どもの展望記憶の成否に影響していた。2つの右前頭背外側ネットワークの変動性、ダイナミクスが子どもの展望記憶の成功に関わっていた。そのダイナミクスは継次処理の高さと相関関係にあった。これらから、同時にいくつもの処理をこなすよりも、機能の切り替え、時空間に関わる情報の制御のオン・オフまたは処理の濃淡があることが、子どもの展望記憶の成功を促進する可能性が示された。また、年齢が上がるとより動的になるネットワークも明らかになり、成人における展望記憶の脳内メカニズムとの共通性が示唆された。
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