本研究の目的は、申請者がヒト脳の白質解剖および神経束追跡法(Tractograpy)で認めた、「楔前部(後方)と内側側頭葉を結ぶ神経束」及び「楔前部(前方)と前頭葉を結ぶ神経束」を、『現在と過去、未来の時間の流れの意識の神経基盤』の一部と捉え、その神経束ネットワークをヒト脳で構造学的に解明することである。本研究の結果により当該 新学術領域研究「時間生成学」が目指す時間を認知する脳領域や脳ネットワーク基盤が解明される。 具体的な研究計画として、期間内に『現在と過去、未来 の時間の流れの意識の神経基盤 』として、(1)「楔前部 後方と側頭葉内部を結ぶ神経束ネットワーク解析」、(2)「楔前部 前方と前頭葉を結ぶ神経束ネットワーク解析」の 2つの 神経束ネットワーク の構造学的結合(Structural connectivity)解析を行い、可能な限り機能的結合(Functional connectivity)との相関性を解明する。 当該年度は、上述の(2)「楔前部 前方と前頭葉を結ぶ神経束ネットワーク解析」の研究を実施した。まず、楔前部と脳皮質全体の構造学的結合(Structural connectivity)解析を行い、安静時fMRIデータを解析し機能的結合(Functional connectivity)との相関性を解析した。その結果、Precuneusは機能的に5領域に分割されるが、各領域は特徴的な他の脳領域との構造的結合性を有することを見出し論文発表した(Sci Rep.13(1):1936.2023)。Precuneusの前領域は、感覚運動野との結合性が強く、腹側域は後帯状回や内側前頭葉との結合性が強く、後方域は海馬傍回や視覚野との結合性が高い傾向であった。本研究結果により、多様な楔前部の機能(視空間認識、現在感覚、記憶、自省等)の神経基盤解明への貢献が期待される。
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