研究領域 | 時間生成学―時を生み出すこころの仕組み |
研究課題/領域番号 |
21H00300
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池上 高志 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10211715)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 主観的時間 / 深層学習 / Mind Time |
研究実績の概要 |
機械の時間と生命の時間の違いを考え、生命システムに生まれるひとつの時間軸=意識の時間について考えることが目的である。2021年度は、このテーマに関する2つの認知実験と1つのシミュレーション実感を行い、またMindTimeMachine2という主観的時間構造を持つマシーンの制作に着手した。 1. 仮想空間内で簡単な作業を行う実験を行った。その結果、被験者の手指の動きと主観的な時間が、体内の時間遅れによってどのように変化するかを評価した。その結果、時間遅れの大きさに相関して、手の動きや時間の感じ方が変化することがわかった。2. 音楽のmidi シークエンスを深層学習であるtransformerに用いて、そのシークエンスをどのように処理するかを解析することで、予測に伴う過去の系列へのアテンションの構造を調べた。特に、クラシックの音楽の学習をしたシステムと、そうした音楽を学習していないシステムの予測に際するアテンションの向け方の違いを調べた。結果としてアテンションの向け方は大きく異なり、学習することで生まれる予測パターンの違いを議論した。3. 高フレームレート(240fps)から低フレームレート(24fps)の、同じ内容のビデオを視聴する認知実験を行い、その違いが分かるかを検証した。いくつかの傾向はあるが、すべての被験者に共通の傾向は見つかっていない。コンテンツによってはフレームレートの違いはほぼ間違いなく区別できることがわかった。
それぞれの成果を論文としてまとめることに成功した。現在、その成果をreviewコメントを考慮しつつreviseし、再投稿の準備をすすめている。 また、MindTimeMachine2 は、仮想現実のシステムを用いて体験型にし、一般の人にも公開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりの3種類の実験を行うことができた。またMindTimeMachine2の基礎デザインをつくることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に始めた以下の3つの課題について、論文をreviseして投稿する。. 1. 仮想空間内で人工的な時間遅れの大きさに相関して、手の動きや時間の感じ方が、非意図的にゆっくりになっていくことをベースに、主観的時間の身体性のやくわりについて論じる。特に被験者の数を増やすこと、タスクを工夫することを考える。 2. 音楽のmidi シークエンスを深層学習であるtransformerに用いて、そのシークエンスをどのように処理するかを解析することで、予測に伴う過去の系列へのアテンションの構造を調べた。このことを、現象学で議論される過去把持、未来把持の問題と絡めて議論する。またクラシックと、サイン波だけではなく、いくつかの多様な音楽についても同様な解析を試みる。 3. 高フレームレート(240fps)から低フレームレート(24fps)の、同じ内容のビデオを視聴する認知実験を行い、その違いが分かるかを検証した。これについては被験者を増やすこと、また新しい視覚認知のモデルとして、イベントカメラを用いた議論をすすめる。 またMindTime Machine2について、オキュラス・クエストを用いたインプリメンテーションをすすめ、2023年の1月2月に、一般公開する。
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