公募研究
神経伝達物質であるドーパミンは、主観的な時間経過を制御していることが知られている。ヒトおよび実験動物におけるこれまでの研究から、「脳内ドーパミンレベルの上昇は体内時計を加速させる」という「ドーパミン時計仮説」が提唱されてきた。しかし、最新の研究において、ドーパミン神経の活動は体内時計を早めるのではなく、むしろ遅くさせる可能性が示唆された。このことから、より詳細な検討が可能な実験技術を用いたドーパミン時計仮説の再検証の必要性が高まっている。中脳ドーパミン神経の活動は、快情動の生起に中心的な役割を果たすだけでなく、動物の時間知覚、特にインターバルタイミングの知覚にも重要であると考えられている。本研究では、蛍光ドーパミンセンサーと多点同時フォトメトリーイメージグを用いた「多点同時ドーパミン計測法」を用いて、中脳ドーパミン神経から入力を受ける4つの脳領域、腹側線条体・背側線条体・前頭前皮質・扁桃体から同時ドーパミン測定を行うことで、各領域におけるドーパミン放出が動物の時間知覚に果たす役割について検討した。その結果、腹側線条体・背側線条体におけるドーパミンレベルが特に上昇している試行において、マウスの示す、時間経過に基づく予測的な報酬希求行動の発現が遅れる傾向が見いだされた。一方、前頭前皮質および偏桃体におけるドーパミンレベルとマウスの時間に基づく報酬予測行動との明確な関連性は見出されなかった。以上の結果から、線条体におけるドーパミンレベルの上昇は時間経過を過小評価させる(=体内時計を遅くさせる)可能性が示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neuropsychopharmacology Reports
巻: 42 ページ: 521~525
10.1002/npr2.12287
Frontiers in Neuroscience
巻: 16 ページ: 1~13
10.3389/fnins.2022.905991