研究領域 | 時間生成学―時を生み出すこころの仕組み |
研究課題/領域番号 |
21H00312
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
倉岡 康治 関西医科大学, 医学部, 助教 (10581647)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 扁桃体 / ニューロン / 社会的情報 / 時間 / サル / 腹側線条体 |
研究実績の概要 |
親や上司に怒られている時間は長く感じるのに、友人や恋人との楽しい時間は瞬く間に過ぎてしまうように、時間を感じる過程では、社会的状況の影響を受けることがある。そこで本研究課題では、社会的情報の影響を受ける時間処理に関わる脳神経基盤は何かという問い対する答えを出すことを目指す。具体的には、「社会的情報の影響を受けた時間処理においては、時間処理への関与が知られる線条体と、社会的情報処理への関与が知られる扁桃体の機能的結合が強まる」という仮説を検証することを目的とする。 上記の目的のため、本年度はサルを対象に社会的情報刺激の提示時間を弁別する課題を訓練し、社会的情報により時間処理に影響を受けた動物モデルを確立することから開始した。幾何学図形であるニュートラル刺激の時間弁別に対して、威嚇や服従といった負の他個体表情刺激は実際の提示時間より長いと判断し、一方で異性画像やのどかな毛づくろい画像の提示は実際より短いと判断することが多かった。よって、サルも社会的情報により時間の感じ方に影響を受けることが明らかになった。 次に時間弁別課題に用いた社会的情報刺激に対する自律神経応答を知るため、瞳孔径変化を検証したところ、特に威嚇や服従といった負の表情刺激に対する瞳孔径が大きく、交感神経応答が起きていることが明らかになった。 さらに時間処理に関与している脳領域の1つとして知られる線条体の腹側部に投射を持つ扁桃体から上記の刺激に対する神経応答を記録し、社会的情報刺激に対して異なるニューロン応答が記録できている。これらのニューロン応答が線条体の腹側部に情報を送ることで、時間弁別が社会的情報の影響を受けている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は令和3年度より開始したため、実験の立ち上げからから行った。2頭のサルで訓練を行ったが、このうち先に訓練を始めたサルが夏頃に訓練を中断せざる終えなくなった。2頭目のサルは順調に訓練が進んだ結果、新たな時間弁別課題を学習させ、刺激提示時間弁別が社会的情報の影響を受けることを明らかにした。その上で行動結果が自律神経応答とも関連していることを見出した。さらに、扁桃体からの神経応答記録も進めている。ただし、もう一つの対象領域である腹側線条体からの神経応答記録はまだ行えていない。 以上の理由から、「やや遅れている」状況である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、社会的情報刺激を用いた時間弁別課題中の扁桃体神経活動記録を続けるとともに、扁桃体の投射先の1つで、時間処理への関与が考えられる線条体からも神経活動記録を行う。その上で、「社会的情報により時間弁別に影響を受けている際には、扁桃体と線条体腹側部の機能的結合が強くなる」という仮説の検証を行うため、両脳領域の神経活動の相関を検証する。 また、領野間の神経活動の相関が、社会的情報により影響を受ける時間弁別に関与することを明らかにするため、微小電気刺激等により扁桃体の神経活動を操作することが、時間弁別行動や線条体腹側部の神経活動に変化をもたらすかを検証する。
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