研究領域 | ソフトロボット学の創成:機電・物質・生体情報の有機的融合 |
研究課題/領域番号 |
21H00322
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
池内 真志 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (90377820)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ソフトロボティクス / 胚移植 / 光駆動 / 形状記憶 / 3Dプリンタ |
研究実績の概要 |
胚移植から妊娠に至る成功率は3割程度となっており,患者とその家族にとっては,心身及び経済面で大きな負担となっている.さらに,体外受精では,子宮外妊娠等の重大事象の発生率が,自然妊娠と比べて数倍高いことも問題となっている.低い着床率や,子宮外妊娠などの重篤な事象の主な原因として,子宮内での胚の位置が制御されていないことが挙げられる.従来の胚移植では,胚を子宮内に培養液とともに注入するが,その後,胚は子宮内で浮遊状態にあると考えられ,適切な位置に着床するか否かは確率過程である.よって,胚を子宮壁の適切な位置に精密に保持することができれば,これらの問題の多くが解決されると期待できる.昨年度までの研究では,代表者が培ってきた膜マイクロデバイス技術を利用し,体外受精後の胚を、子宮内の適切な位置に精密に保持する,世界初の「胚移植制御システム」の開発に成功した.ただし,子宮内に導入後,直ちに胚が収容部から放出されるため,着床直前の胚盤胞の段階まで体外で受精卵を培養しておく必要があり,治療の適応範囲に制限があった.本研究計画では,これまでの研究で開発したデバイスを発展させ,受精卵の段階で胚をデバイスに格納して子宮内に移植し,子宮内に留置したデバイス内で胚盤胞まで成長させ,着床に最適なタイミングでデバイス外に放出することを目指す.そのために,本年度は,温度応答性形状記憶ポリマーに,波長選択性の光熱変換ナノ粒子を配合した新素材を開発し,この材料を用いて胚収容部の出入口にバルブ設けることで,特定波長の光を照射した時にのみバルブが開放する仕組みを開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度半ばに代表者の異動という予期していない事柄があったものの,関係各機関および研究協力者の尽力により,研究環境の移動はスムーズに完了し,計画していた要素技術の開発は完了した.また,新たな所属先での動物実験の承認も得て,今後も当初の計画に則った研究遂行が見込まれる.よって,概ね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
開発した光応答性マイクロバルブと,従来のエラストマー製胚収容部を組み合わせた,胚移植用マイクロロボットを開発する. このマイクロロボット内で,生体外での受精卵の培養を実施し,胚盤胞到達率および形態について異常の有無を検証する. さらに,小・中型動物を用いて,子宮内への胚移植用デバイスの搬送,外部磁場による子宮内での位置制御,さらに光照射による胚の子宮内への放出を実証する.
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