研究領域 | ソフトロボット学の創成:機電・物質・生体情報の有機的融合 |
研究課題/領域番号 |
21H00323
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
八木 透 東京工業大学, 工学院, 准教授 (90291096)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経インタフェース / 電極 / リポソーム / DNAナノチューブ |
研究実績の概要 |
本年度は主に,脂質二重膜に挿入するのに最適なDNAナノチューブの設計製作を行った.今回設計したDNAナノチューブは,鍵と鍵穴の関係になった1ペアのDNAナノチューブである.鍵側のDNAナノチューブは鍵穴側のDNAナノチューブと選択的に結合することができるが,切り離した状態で使用することもできる.学外の合成サービスを利用してDNAナノチューブを作製し,所望のサイズと結合機能を有するDNAナノチューブができたかを電気泳動で評価したところ,鍵と鍵穴を切り離した状態のDNAナノチューブ,結合した状態のDNAナノチューブの両者を観察することができ,想定通りのDNAナノチューブを合成できたことを確認した. また,リポソームにDNAナノチューブを垂直に挿入できたかを蛍光物質で評価した.もし垂直に挿入できていれば,リポソームの膜の内外で物質の移動を観察することができる.そこで膜内で垂直にDNAナノチューブを固定するため,ナノチューブの一部に固定用ハプティックスの役割を果たすコレステロールをつけた.実験では,このコレステロールが想定通りに機能するかについても併せて評価した.その結果,蛍光強度がリポソーム内外で変化する様子を観察することができ,膜に垂直に挿入できたと思われるデータを得た.しかし膜に平行に張り付いてチャンネルの役割を果たさなかったために蛍光が変化しなかったとおもわれるデータも得られた.そのため膜に垂直な状態で固定する方法をさらに改良する必要であることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNAナノチューブは,ほぼ所望のものを設計製作できたが,膜への固定方法に未だ改良の余地がある.膜に対して垂直に挿入し固定できれば,次の段階であるパッチクランプによる電気計測を実施して安定したデータを得ることが可能と思われる.
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今後の研究の推進方策 |
膜内で垂直にDNAナノチューブを固定するために付与するコレステロールについての再検討,ならびにDNAナノチューブを挿入する先であるリポソームに用いる脂質の種類を最適化することで,課題解決の方法を確立する.次に膜を電極基板上に配置するために,中空のマイクロニードルアレイを利用して陰圧で膜をニードルの先端に捕捉して刺入し,ニードル底面と多点の電極基板を接着させる.膜をニードル上に安定的に固定するための陰圧条件,ニードルと電極基板を接着するための条件を明らかにする. 次に膜が含まれる溶液にDNAナノチューブを添加して膜と融合させ,膜上のDNAナノチューブをパッチクランプ法で電気的に評価し,DNAナノチューブを介したチャネル電流を計測する.結果をもとに,人工細胞膜の構成成分がDNAナノチューブの電気抵抗へどのように影響するかを明らかにする. また構築した電極アレイで細胞内刺激を行い,さらにその生体適合性を最大化する技術について研究を行う.そのため電極アレイで培養神経細胞を刺激し活動電位を記録する実験を実施する.ここでは刺激エネルギーを変更し,細胞内刺激に最も効率的な条件を明らかにする.電極アレイの導電性はDNAナノチューブ量と正の相関がある.一方,DNAナノチューブが過剰の場合,細胞が損傷されると推測される.そのためDNAナノチューブの量と細胞生存率の関係を評価し,高い生体適合性を実現するDNAナノチューブの最適量を明らかにする.
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