公募研究
研究代表者はこれまで生体細胞や組織の機能を搭載したデバイスを開発してきた。これは、化学エネルギーのみで機能発現でき、自律的に駆動するという点できわめて特徴的であり、これまで、心筋細胞ポンプやミミズの筋肉を用いたポンプなどを開発してきた。だが、このような生体を用いたデバイスは、耐久性や倫理的な問題から実用化にはかなりの時間を要する。そこで研究代表者は自励振動ゲルに着目した。これは、化学エネルギーを力学エネルギーに転換することで周期的膨潤収縮振動を生み出すもので、大きな体積変化を起こせる。本研究では、この材料を心筋の代わりに用いることで、生体と同様自律的に駆動するマイクロポンプを実現する。当該年度は、昨年度までのゲル基本性能の計測結果をベースに、実際に自励振動ゲル駆動型マイクロポンプを設計試作した。まず、ゲルの膨潤収縮によって直接駆動する部分にあたる、プッシュバー構造をどれだけ変位させられるか計測した。土台となるマイクロ流体チップは柔軟で変形可能なシリコンゴムで作製し、ゲルバーは固定したガラス板とプッシュバーの間に挟んで変位を見積もり、最大0.1 mm程度とポンプとして機能させるのに十分であることを明らかにした。次に実際のポンプ機能を実証した。すなわち、マイクロ流路内流体を蛍光微粒子で可視化し、その流れを蛍光顕微鏡で観察した。ゲルを搭載し、数十分マイクロ流路内の観察を続け、撮影動画の解析から少なくとも複数周期でゲルの膨潤収縮と同期して粒子が順方向に動くか静止に近い状態になることを繰り返し、トータルとして正味の流量が得られていることを実証した。またその温度応答性も確認できた。これは、例えば埋め込みデバイスを考えたとき、体温変化に応じた薬物放出といった応用も可能となり、実用的な意義も大きい。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
iScience
巻: 25 ページ: 104639
10.1016/j.isci.2022.104639
Scientific Reports
巻: 12 ページ: 7653
10.1038/s41598-022-11637-3
Analytical Chemistry
巻: 94 ページ: 16299-16307
10.1021/acs.analchem.2c02815