公募研究
ヒトの主要組織適合遺伝子複合体(Human leukocyte antigen; HLA)は免疫応答の入り口として自己と非自己の認識を担うとともに、ヒトにおける機能的遺伝子としては最も高度な多型を示す。この多型は自己免疫性疾患や感染症、さらには薬剤副作用と関連する遺伝要因として研究が進んでいる。さらに、その高度な多型性は個人識別、人類集団の起源や形成過程を探る遺伝マーカーとしても有益である。本研究では古代人のHLA領域のハプロタイプ構造を明らかにし、免疫学的な視点からもヤポネシア人の歴史を探ることを目的としており、これまでに、古代人のHLA遺伝子型ならびにHLAハプロタイプの決定を進めた。11のHLA遺伝子(HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、)についてプローブとのハイブリダイゼーションによってHLA遺伝子由来のDNA断片を濃縮した。ハイブリダイゼーションによって得られたDNAライブラリをHiSeq (illumina)にて解析し、IPD-IMGT/HLADatabaserelease3.21.0.をリファレンスとしてHLA型を決定した。アバクチ成人、船泊17号、船泊23号、船泊5号、平安山原A遺跡3号、古月4号、古座間味貝塚シル地区No.1、古座間味No.3、七五三掛2号、トマチン遺跡2号、トマチン遺跡3号の11サンプルについて1つ以上のHLA遺伝子のタイピングが可能であった。このうち、アバクチ成人、船泊23号、七五三掛2号の3サンプルについては今回対象にした全てのHLA遺伝子のタイピング結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
当初困難が予測された古代人のHLAタイピングについて、結果を得ることに成功している。
HLA 型のアレル頻度およびHLA ハプロタイプ頻度について、日本における県ごとの HLAハプロタイプ頻度との比較を実施し、日本列島におけるヤポネシア集団の起源や形成過程について考察する。また、これまでにHLA頻度の情報が少ない東北アジアおよびアマゾンにおける希少民族集団についても解析を進め、HLA アレル頻度およびハプロタイプ頻度情報を整備していく。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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