研究領域 | ゲノム配列を核としたヤポネシア人の起源と成立の解明 |
研究課題/領域番号 |
21H00352
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
中川 奈津子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, 特任助教 (50757870)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日琉諸語 / 言語学 / 方言学 / 語順 / 類型論 |
研究実績の概要 |
近年、語彙の音素配列の対応を用いる以外に、語順などの類型論的特徴から言語どうしの系統関係を明らかにしようというアプローチが試みられてきた。しかし類型論的特徴(e.g., 目的語・動詞の順序と名詞句・接置詞の順序)はしばしば相関しており、このアプローチは前提に問題があるかもしれない。そもそも日琉語族の中で、どれほど語順の変異が存在するのか、もし存在するなら、何によってその変異が生まれたのか未だ明らかになっていない。基本語順に関しては東京方言を始め、日琉諸語の各言語・方言の参照文法の中で簡単には触れられてはいるものの、基本語順から外れる語順の頻度差があるのかどうか、あるとしてどの程度なのかに関しての研究は、応募者の知る限りほとんどない。本研究では、日琉諸方言コーパスと応募者の持っている談話データから、東北、関東、関西、九州、南琉球の談話サンプルを抜き出し、語順のばらつきがどの程度あるのかを調べ、日琉諸語が分岐したのち千数百年間でどの程度の変異が発生しうるのか、発生しないのかを調べる。調べる語順として、主語・目的語・述語の順序の他、数量詞・名詞、代名詞・副詞・述語の順序などの変異を調べ、語順どうしの相関関係があるか否か分析する。また、語順と深く関わりがあることが予測される格体系との相関関係も見る。 今年度は青森(弘前)、関西(京都、大阪、兵庫)、沖縄(宮古)のデータに対するアノテーションを行った。成果の一部は学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アノテーションの方針が固まり、成果を一部発表できたので概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
日本語諸方言コーパス(COJADS)を用い、東北(青森方言)、関東(東京方言)、南琉球八重山(白保方言、波照間方言)のアノテーションを行い、分析する。具体的には、(a) それぞれの名詞句、副詞の節内での語順、(b) 項構造、 (c) 述語、(d) 述語からの位置、(e) 名詞句に後続する格標識・主題標識・焦点標識の種類の情報、(f) 言語・方言が話されている場所を付与する。(b), (c), (e), (f) は人手でアノテーションを行い、他の情報は、コーパスが文節ごとに区切られていることを利用して自動で付与する。COVID-19が収束していれば、青森県と八重山にフィールド調査に行き、さらなる談話資料を収集、書き起こしを行う。調査旅行が不可能な状況であれば、人を雇って既存の談話資料の整理を行う。(a), (d) とその他の変数の相関関係を調べる。特に、東北と八重山で語順の頻度の類似性があるか否かを検証する。各方言・言語の語順の予測モデルを作る。得た結果を日本言語学会、日本語学会、Association for Linguistic Typologyの定例会議などで発表し、論文にする。
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