研究領域 | 植物の力学的最適化戦略に基づくサステナブル構造システムの基盤創成 |
研究課題/領域番号 |
21H00358
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 明 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (40182901)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 力学的最適化 / センシング / レーザー直接描画 / 機能性パターン / 植物 |
研究実績の概要 |
本研究では,植物の力学的最適化過程とサステナブル性の解明を目的として,レーザー直接描画法により形成した機能性パターンを用いた動的挙動の観察および数値計算によるシミュレーションや,種々手法を用いた非破壊・リアルタイムセンシングに関する検討を行っている。植物は様々な自然環境の中でそれらに適した形態となるために,重力屈性,光屈性,伸長成長,回旋運動などの動的挙動による多様な力学的構造を示すと考えられる。建築構造物も,自然環境にさらされて,力学的な経年変化を受けている。このような自然環境下での構造や特性の変化をセンシングする場合に課題となるのが,センサー用の電源やデータ取得のために設置する機器類となるが,フィールドワークにおいては制約があることが多い。本研究では,フィールドワークへの適用が可能な,電源の必要のないパッシブセンサによるワイヤレスセンシング法の開拓と社会実装を目指してUHF(Ultra High Frequency)帯RFID(Radio Frequency IDentification)タグ型センサーを用いた植物の重力屈性や光屈性に関する検討を行った。RFIDタグに用いたICによって、周囲の誘電率変化に対応したセンサーコード,ICが受信している電力を表すオンチップRSSI(Received Signal Strength Indicator)コード、およびIC周りの温度に変換可能な温度コードのリアルタイムセンシングが可能となり、これらのパラメータの変化は、植物の重力屈性や光屈性における植物の変位および変位速度の変化と良い一致を示した。UHF帯RFIDタグセンサーは,フレキシブルで小型軽量・安価なセンサーであり,それを用いたワイヤレスセンシング法は、植物や建築系のフィールドワークにおいて有効なセンシング法になると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,植物の力学的最適化過程とサステナブル性の解明を目的として,レーザー直接描画法により形成した機能性パターンを用いた動的挙動の観察および数値計算によるシミュレーションや,種々手法を用いた非破壊・リアルタイムセンシングに関する検討を行ってきた。その研究遂行のなかで,レーザーマーキング法で茎に形成した微細なドットマトリックスパターンの各点の変位の時間変化から追跡したところ,植物は屈曲と伸長のバランスを制御しながら力学的な最適化構造へ向かっていくことを示す結果を得ている。また, 重力屈性―光屈性において,光屈性が顕著だった豆苗の茎の先端から重力屈性が観察された基部まで,茎の断面形状の変化の観察を行ったところ,多角形状の先端部から次第に楕円形となり,基部に向かってより円形に近い構造への変化が観察された。それぞれの部位の茎断面形状に対して3Dモデルを用いた屈曲のシミュレーションを有限要素法によって行ったところ,植物は自らの挙動に最適な形状を選択して,力学的な最適化構造へと変位していることを示唆する結果を得ることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでは研究対象として,エンドウ(Pisum sativum L)の芽生えである豆苗を扱ってきており,植物が示す動的挙動に関する観察は,実験室内でのものであった。植物は様々な自然環境の中でそれらに適した形態となるために,重力屈性,光屈性,伸長成長,回旋運動などの動的挙動による多様な力学的構造を示すと考えられることから,フィールドの中での植物の動的な挙動のセンシングに適した手法の開拓が望まれる。建築構造物も,自然環境にさらされて,力学的な経年変化を受けている。このような自然環境下での構造や特性の変化をセンシングする場合に課題となるのが,センサー用の電源やデータ取得のために設置する機器類となるが,フィールドワークにおいては制約があることが多い。本研究では,フィールドワークへの適用が可能な,電源の必要のないパッシブセンサによるワイヤレスセンシング法の開拓と社会実装を目指して,UHF(Ultra High Frequency)帯RFID(Radio Frequency IDentification)タグ型センサーを用いた植物の動的挙動の検討を進めている。
|