エンドウ(Pisum sativum L.)の芽生えである豆苗の重力屈性挙動を,レーザーマーキング法で茎に形成した微細なドットマトリックスパターンの各点の変位の時間変化から追跡したところ,植物は屈曲と伸長のバランスを制御しながら力学的な最適化構造へ向かっていくことを示す結果が得られた。重力屈性―光屈性において,光屈性が顕著だった豆苗の茎の先端から重力屈性が観察された基部まで,茎の断面形状の変化の観察し、それらの形状の3Dモデルを用いた屈曲のシミュレーションを有限要素法によって行ったところ,植物は自らの挙動に最適な形状を選択して,力学的な最適化構造へと変位していることが示唆された。動的過程においては,水により生じる膨圧の影響があると考えられることから,重力屈性と光屈性のサイクルにおける植物組織内の水の移動現象の変化をヒートパルス法により調べたところ、屈曲挙動が顕著に起こると同時に、水流速に関わるパラメータであるヒートパルス速度も増加することが示された。このような植物の構造最適化過程における動的挙動の把握には3次元的な観察手法が有効となることから,レーザー描画で蛍光性マーキングを施した植物の屈曲過程の3Dイメージを観察する手法を開拓し,植物の屈曲過程でのねじれや各部位での伸長成長の違いの可視化を行った。さらに,植物や建築の分野でのフィールドワークへの適用が可能な,電源の必要のないパッシブセンサによるワイヤレスセンシング法の開拓と社会実装を目指して,植物への装着に特化したUHF(Ultra High Frequency)帯RFID(Radio Frequency IDentification)タグ型センサーの開拓を行った。
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