本研究では、樹木の独特な力学的特性を理解・利用して、多様な形態を実現できる新たな張力空間構造システムを提案する。本研究の成果は、空間構造のブレークスルー的進化に寄与し、その実現のための新素材の開発にもつながると期待される。また、本研究は、圧縮あて材と引張あて材の内部構造と成長応力に起因とした樹形進化に対して、構造力学の観点からそのメカニズムの解明に貢献できると考えられる。2022年度には、以下の成果が得られた。 ①スギ幹残留応力の解析値は、実測データと比較して、応力分布の傾向が一致していることを示した。また、木本植物の残留応力より、風荷重に対する抵抗力がわずかしか向上しないため、樹形制御への寄与がより重要ではないかと推測される。 ②トラス構造の釣合い行列に対して、特異値分解を行ったうえ、釣合い形状に近いモードのみを考慮することにより、構造最適化の解空間を圧縮する方法を提案した。提案手法によっては、複雑な構造物に対しても効率よく最適解を探索することができる。
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