研究領域 | 植物の力学的最適化戦略に基づくサステナブル構造システムの基盤創成 |
研究課題/領域番号 |
21H00372
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
後藤 栄治 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90614256)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 葉構造変化 / 光環境 |
研究実績の概要 |
申請者らは、日本各地の様々な植生の林床に生育する120種以上の植物について、柵状組織細胞の形状および葉緑体の細胞内配置を調べ、細胞形状が光環境に適応していることを発見した。すなわち、直射日光の届かない林床にのみ生育可能な植物種の多くは、柵状組織細胞が逆円錐形であった。逆円錐形の細胞は、微弱光を効率よく吸収するためには理想的であり、植物が弱光環境で生育するための新たな適応現象であると考えられる。ここで興味深いことに、逆円錐形の細胞をもつ植物の葉構造は、一般的な植物とは異なり、細胞層が少なく、細胞同士の間に空間が多く存在することを発見した。この新発見の葉構造は、少数の細胞で構築されていることから、葉を展開・維持する上で省資源な構造であると考えられる(以下、省資源葉構造と呼ぶ)。また、省資源葉構造をもつ植物の葉は、萎れることなく、触手で調べた限り、細胞が密に詰まっている一般的な植物の葉と同様の強度を有していた。つまり、省資源葉構造をもつ葉は、葉の強度に直結する細胞層が少ないにも関わらず、力学的な強度を維持していることを見出した。実際の葉を用いて、動的粘弾性試験を行ったところ、細胞が蜜に詰まってる葉は硬い構造であることが示唆された。その一方で、省資源葉構造をもつ葉は、応力を逃がしやすいことが分かった。葉の構造を正確に把握するために、X線CTスキャンを用いた解析をおこない、円柱形と円錐形の細胞形状を3D構築することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞の形状が異なる葉を用いた力学的特性の違いを明らかにすることができた。また、X線CTスキャン解析を用いることで、詳細な構造を3Dで再現することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
領域内メンバーとの共同研究により、新発見の葉構造の力学的特性を明らかにする。再構築した画像データに、組織毎の細胞壁の厚さのデータを追加する。コンピュータ上で再現した葉構造について、曲げや引っ張りなどの力学的特性をシミュレーション解析することで、省エネ葉構造の力学的特性を明らかにする。
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