研究領域 | 植物の力学的最適化戦略に基づくサステナブル構造システムの基盤創成 |
研究課題/領域番号 |
21H00373
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
永井 拓生 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (60434297)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 竹 / 稈形態 / 力学的特性 / 異方性 / モウソウチク / マダケ / 植物構造オプト |
研究実績の概要 |
(1)竹の各種強度試験法の確立・・・竹の力学的性質を調査するため,縦圧縮,横圧縮,せん断,曲げ等,各種強度試験を実施するための試験治具の設計と制作を行った。曲げ試験は治具の形状が強度に大きく影響するため,治具形状のパラメータを様々に変更し,曲げ強度に対する影響を調査したうえで治具形状の設計を行った。 (2)曲げ強度の推定・・・Brazier効果理論によって求まる曲げ強度と実際の竹を用いた実験を比較し,曲げ強度の推定方法について検討を行った。純曲げ状態ではBrazier効果理論は実験とよい整合を示すものの,ISOの試験方法ではBrazier効果よりも載荷部の応力集中のほうが強度への影響が大きいことが分かり,その定量的評価が今後の課題である。 (3)竹の稈形状の測定・・・マダケ,モウソウチク約10本ずつについて,節座標,稈直径,稈壁厚等を計測した。本年度に強度試験を行い,形状と力学的性質のモデル化を行う。 (4)竹の含水率の簡易推定法の確立・・・木質系材料の強度や剛性には一般的に含水率が大きく影響するが,ISO等で定められた含水率の測定は長時間(最短でも26h)を要するため,より少ない試料・時間でISOと同等の精度を持つ含水率測定方法を検討した。 (5)竹構造建築物の分類・・・文献資料をもとに,世界の竹構造建築物の特徴を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,初年度に竹試料を必要分採取し,その後各種の実験・実測を行う予定であったが,一部の試料採取がコロナ禍の影響で遅れたものの,2023年度の前半に挽回することができた。その他実験調査に必要な準備も計画通り進めており,順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
竹は構造力学的に高い強度・剛性を持ち,建築規模の荷重を支持しうる性能を持つ。また,それ自身も自重や風等の外力に対し非常に合理的な構造を持ち,構造計画や最適設計の観点からも研究対象として大変興味深い。そこで,竹そのものを建築構造に利用すること,および竹の構造合理性を概念として学ぶことの2つを目的とし,以下の研究を行った。 【1】丸竹稈の曲げ破壊メカニズムおよび曲げ強度の推定 丸竹稈が曲げを受ける際に稈壁に生じるBrazier効果に着目し,丸竹稈の曲げ破壊に対する影響を考察する。丸竹稈が曲げを受ける際に稈壁に生じる繊維直交方向の応力と変形を理論定式化と数値解析を通じ定量的に評価し,実験により得られた繊維直交方向の特性値と比較することで,丸竹稈の曲げ破壊メカニズムに対する影響を評価する。 【2】竹の稈形態と力学的性質の傾斜分布の調査 竹の構造利用の促進にあたっては,竹の力学的性質の把握,耐久性の定量的評価,工法の開発等,多くの課題がある。力学的性質は竹稈の部位や形状によって統計値が大きく変化するほか,繊維方向・直交方向で大きく物性値が異なる異方性を持つため,体系的な整理には今後も多くの実験調査が必要である。竹稈形態の幾何学的性質と,数種類の力学的性質に着目し,それらの関係について調査する。
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