【1】丸竹稈の曲げ破壊メカニズムおよび曲げ強度の推定 丸竹稈が曲げを受ける際に稈壁に生じる繊維直交方向の応力と変形を理論定式化と数値解析を通じ定量的に評価し,実験により得られた繊維直交方向の特性値と比較することで,丸竹稈の曲げ破壊メカニズムに対する影響を評価した。 曲げを受ける丸竹稈の繊維直交方向応力の実測値は,節の拘束効果が小さい場合において,Brazier効果の理論定式化および有限要素解析の結果とよい整合を示した。丸竹稈の曲げ破壊はBrazier効果による直交断面の扁平化によって生じる可能性が高く,上記の条件下において,稈壁の繊維直交方向の曲げ強度を把握することで,丸竹稈の曲げ強度を推定することが可能と考えられる。 【2】竹の稈形態と力学的性質の傾斜分布の調査 竹の力学的性質は,竹稈の部位や形状によって統計値が大きく変化するほか,繊維方向・直交方向で大きく物性値が異なる異方性を持つため,体系的な整理には今後も多くの実験調査が必要である。竹稈形態の幾何学的性質と,数種類の力学的性質に着目し,それらの関係について調査した結果を示した。 竹稈の根際~末口に亘る竹稈の幾何学的変化,力学的性質(繊維平行方向圧縮強度Fc,繊維直交方向曲げ強度Fb⊥,せん断強度Fs),全乾比重ρdryの分布を調査した。根際→末口に向かっていずれの物性値も大きくなる傾向が見られ,特にFcとρdryは顕著である。一方,Fb⊥,Fsでは若干の相関は認められるものの,位置による各物性値の変化は小さく,おおよそ一定である。【1】で確認した通り,曲げ破壊は繊維直交方向の強度が決定的と考えられるため,竹稈の力学的合理性は,断面サイズ(稈直径,稈壁厚)と節の配置といった幾何学的性質によりその弱点を補っている点にあると考えられる。
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