研究実績の概要 |
溶液理論に基づいてアミノ酸置換に基づく生体発動分子の運動制御理論を構築する事を目指し、以下の研究を行った。(1)最近出版されたBacillus PS3 F1-ATPaseのクライオ電子顕微鏡構造(M. Sobti, H. Ueno, H. Noji, and A.G. Stewart, Nat. Commun., 12, 4690 (2021).)を溶媒のエントロピーの観点から解析し、これまでに提案したF1-ATPaseの回転のメカニズム(T. Yoshidome, Y. Ito, M. Ikeguchi, and M. Kinoshita, J. Am. Chem. Soc. 133, 4030 (2011).)とコンシステントな結果を得た。すなわち、提案したメカニズムの妥当性を示すことに成功した。(2)(1)の研究を行うに当たり、単純流体を用いて、分子性流体用積分方程式理論で得られた水和エントロピーを定量的に再現する手法を開発した(論文投稿中)、(3)実験研究者の依頼により、Bacillus PS3 F1-ATPaseの野生型とbetaサブユニットのヒンジ領域に変異を加えたもので分子動力学シミュレーションを実行し、betaサブユニットの開閉運動の変化を解析した、(4)本新学術領域の複数の研究者から提案頂いた、F1-ATPaseの結晶構造の包括的解析について、その準備を整えた、(5)粗視化分子動力学シミュレーションで得られたQ値の時間発展を予測する深層学習モデルを開発した、(6)ランジュバン方程式に基づいてF1-ATPaseの運動を解析するプログラムを実装し、分子動力学法とこのプログラムをハイブリッドする準備を行った。
|