研究領域 | 発動分子科学:エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 |
研究課題/領域番号 |
21H00384
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹澤 悠典 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70508598)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DNA / 人工核酸塩基対 / 金属錯体 / DNAナノテクノロジー / 発動分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、金属錯体形成を駆動力として構造変換を引き起こす「金属配位駆動型DNA発動分子」の創製を目的とした。本年度は主に、(1) 5-ヒドロキシウラシル塩基(UOH)を用いたDNA分子ピンセット構造の開閉制御、および (2) 5-カルボキシウラシル塩基(caU)を用いた金属イオン応答性DNAzymeの開発 を行った。 (1) UOH塩基を用いたDNA分子ピンセット構造の開閉制御:UOH塩基が、水素結合を介した天然様塩基対UOH-Aと金属配位結合を介した金属錯体型塩基対UOH-Gd(III)-UOHを形成することを利用して、Gd(III)イオンの有無に応答して開閉するDNA構造体(DNA分子ピンセット)を構築した。 (2) caU塩基を用いた金属イオン応答性DNAzymeの開発: caU塩基が水素結合型塩基対caU-Aと金属錯体型塩基対caU-Cu(II)-caUを形成することを利用して、Cu(II)イオンの有無に応答して活性を制御できるアロステリックDNAzymeの開発を行った。既報のRNA切断DNAzymeを基に塩基配列を設計し、Cu(II)イオンの添加・除去によりDNAzymeの触媒活性を可逆的に制御することに成功した。 いずれも良好な結果が得られたものの、DNA配列中に非天然核酸塩基(UOHもしくはcaU)を3-4個連続して導入する必要があり、塩基配列設計に制限があった。そこで今後は、一対のみで効率的な「水素結合型塩基対⇔金属錯体型非天然塩基対」の塩基対スイッチングを達成できる新規修飾ピリミジン塩基の開発を行い、様々なDNA構造体の構造変換への応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、金属錯体形成を駆動力として構造変換を引き起こす「金属配位駆動型DNA発動分子」の創製を目的とした。本年度は主に、(1) 5-ヒドロキシウラシル塩基(UOH)を用いたDNA分子ピンセット構造の開閉制御、および (2) 5-カルボキシウラシル塩基(caU)を用いた金属イオン応答性DNAzymeの開発 を行った。 (1) UOH塩基を用いたDNA分子ピンセット構造の開閉制御:UOH塩基が、水素結合を介した天然様塩基対UOH-Aと金属配位結合を介した金属錯体型塩基対UOH-Gd(III)-UOHを形成することを利用して、Gd(III)イオンの有無に応答して開閉するDNA構造体(DNA分子ピンセット)を構築した。 (2) caU塩基を用いた金属イオン応答性DNAzymeの開発:caU塩基が水素結合型塩基対caU-Aと金属錯体型塩基対caU-Cu(II)-caUを形成することを利用して、Cu(II)イオンの有無に応答して活性を制御できるアロステリックDNAzymeの開発を行った。9当量のCu(II)イオンの添加によりDNAzymeの活性が約20倍に上昇し、Cu(II)イオンの添加・除去によりDNAzymeの活性を可逆的に制御することに成功した。 以上のように、UOH塩基およびcaU塩基を使った金属イオン応答性DNAの構築に成功しており、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、以前我々が見出した「水素結合型塩基対⇔金属錯体型非天然塩基対」の配位駆動型塩基対スイッチングに基づき、DNA二重鎖の組み換え(DNA鎖交換反応)やDNA構造体の構造変換を誘起することを目的としている。本年度は主に、(1) 5-ヒドロキシウラシル塩基(UOH)を用いたDNA分子ピンセット構造の開閉制御、および (2) 5-カルボキシウラシル塩基(caU)を用いた金属イオン応答性DNAzymeの開発を行った。いずれも良好な結果が得られたものの、DNA配列中に非天然核酸塩基(UOHもしくはcaU)を3~4個連続して導入する必要があり、塩基配列設計に制限があった。そこで今後は、一対のみで効率的な「水素結合型塩基対⇔金属錯体型非天然塩基対」の塩基対スイッチングを達成できる新規修飾ピリミジン塩基の開発を行い、様々なDNA構造体の構造変換への応用を目指す。
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