研究領域 | 発動分子科学:エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 |
研究課題/領域番号 |
21H00386
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢島 潤一郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00453499)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | モータータンパク質 / キネシン / ミオシン / 細胞骨格 |
研究実績の概要 |
本年度は、本申請研究の課題の一つである、リニア分子モーターが細胞骨格のあらゆる表面上を前後・左右方向に移動する分子機構の解明を目指して、主に微小管依存性モータータンパク質・キネシンの複数分子による運動機構の解明を行った。金ナノロッドをavidin-biotin相互作用を介してnon-processive型のキネシン分子で表面修飾し、金ナノロッドを計測マーカーとして、微小管上を移動中のキネシン分子の集合体の変位(xyz)と向き(θ)を定量した。金ナノロッドのz方向への変位の定量は、金ナノロッドの散乱光をシリンドリカルレンズを用いた非点収差法を、角度(θ)の定量は、金ナノロッドの偏光を1粒子偏光画像化手法により行った。定量の結果、集団のキネシン分子駆動で移動する金ナノロッドは、微小管表面に沿って左巻螺旋軌道で移動するとともに、散乱光の偏光が周期的に振動し、金ナノロッドの短軸周りにも回転(自転)していることが明らかになり、この自転の周期が螺旋の周期の2周期分に相当していた。自転運動は、集団で運動するキネシン分子において新たな運動モードである。数理的な解析から、自転運動を引き起こす個々のキネシン分子の振る舞いが、集団運動をするキネシン分子の微小管の長軸に対して横方向への変位(即ち螺旋運動)を促進することが示唆された。また、シミュレーションの結果から、自転運動が備わった螺旋運動は、小胞などを運搬するキネシン分子集団が微小管上で障害物を回避する際により効率的であることが示唆された。本研究成果は、国際誌へ投稿するとともに、プレプリントリポジトリbioRxivでも公開した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で掲げた達成目標に対して段階的に成果が得られ、それらの成果を国際誌に投稿し、関連論文も投稿できる状態となっているため。
|
今後の研究の推進方策 |
細胞骨格依存性のリニア分子モーターの前後・左右方向への運動方向の分子機構を理解し、任意の運動方向や細胞骨格の切断活性を持つ新たなモーターを創製を目指す。次年度は微小管依存性モータータンパク質としてはキネシン分子に加えダイニン分子を、アクチンフィラメント依存性モータータンパクとしてはミオシン分子を対象とし、フィラメントに沿った螺旋運動、及び切断活性の分子機構を明らかにし、リニアモータータンパク質に共通する仕組みを理解するとともに、個々の運動要素をDNAナノ構造体を用いて集団化させることとで機能増強を目指す。
|