本年度の研究では、細胞内で結晶化するタンパク質iBox-PAK4catの結晶化能について前年度に引き続きさらなる検討を行った。まず、前年度に予備的実験に成功していたiBox-PAK4cat細胞内結晶の成長末端への任意タンパク質の刺激依存的集積実験について、iBox-PAK4catに刺激依存的に二量体化するタンパク質ドメイン、FKBP・FRB(小分子化合物刺激用)およびSspB ・iLIDのみを融合させたプラスミドを作成して検討を行った。これらのタンパク質は、蛍光による可視化のためのGFPを融合させたタンパク質とは異なり、それぞれのタンパク質1種類のみの過剰発現で細胞内に棒状の結晶をつくることを明らかにした。これらのツールは細胞内タンパク質結晶のエンジニアリングにおいて簡便かつ有力なツールである。 一方で、棒状結晶の末端のみでなく、側面全体にタンパク質を集積させる技術の開発を目指して二量体化ドメインとiBox-PAK4catとの間のリンカー長を変化させた実験を行った。しかし、リンカー長によらず側面への明確なタンパク質集積は現在のところ確認できていない。 前年度よりセットアップを開始していた倒立蛍光顕微鏡ステージ上でのCO2インキュベーションシステムのセットアップが完了し、iBox-PAK4など細胞内タンパク質結晶の核形成や結晶成長を~24時間程度までの長時間イメージングで観察することに成功した。このシステムはタンパク質結晶の形成メカニズムや、結晶に限らず細胞内で凝縮するタンパク質の凝縮ダイナミクスの研究において有能なイメージング系である。 タンパク質結晶マイクロマシンの駆動装置であるActuAtorについての検討も引き続き行い、ActuAtorを用いて細胞内のストレス顆粒を離散させると細胞全体のmRNA翻訳活性が向上することを示唆するデータが得られた。
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