蛍光イメージングは発動分子となるタンパク質複合体の機能・動態を直接観察する手法として強力なツールである。本研究では化学に基づいて機能性蛍光プローブをタグとなるタンパク質を介し共有結合、非共有結合で標識する技術を活用し、発動分子となるタンパク質複合体の動態と機能を計測するためのツールを開発する。 第一に、外部エネルギー源を駆動力として回転運動により膜を隔ててプロトンを輸送するプロトンポンプの動態と機能を生細胞内で可視化解析することを目的とした。pHプローブをタンパク質にラベル化し、局所に固定化して計測する手法を構築できたため、その応用研究を進めた。まずは生細胞におけるラベル化とイメージングを行い、プローブがラベル化できることを確認した。次にpH変化を計測する系として、エネルギーの枯渇した飢餓状態においてタンパク質が低pHオルガネラであるリソソームへ移行する過程の可視化を試みた。標識のためにβラクタマーゼをタグ付けしたGFPを細胞内に発現し、pH応答性プローブでラベル化後、飢餓状態に晒した。その結果、時間経過とともにリソソームにあたる区画からプローブ由来の輝点が観察され、pH変化の可視化を達成した。 第二の目的として、繰り返しタンパク質に標識できる蛍光プローブを用い、1分子イメージングを利用した発動分子動態の長距離トラッキング解析を行った。前年度までに繰り返し標識できる蛍光プローブを用いた1分子イメージングが可能であることが分かっていたため、分子モーターとしてはたらくキネシンへタグを介して標識を行った。ATPを加えることでキネシンが微小管上を動く様子を可視化することができた。また、プローブ濃度を上げて常時入れ替わる状態にすることで、動かない状態ではあるが長時間1分子イメージングができることを実証した。
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