研究領域 | 発動分子科学:エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 |
研究課題/領域番号 |
21H00404
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
須藤 雄気 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (10452202)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロドプシン / 光 / 生物物理 / オプトジェネティクス / エネルギー変換 |
研究実績の概要 |
ロドプシンは光エネルギーを吸収し、レチナールの異性化を介して化学エネルギーへと変換する。化学エネルギーは、タンパク質の構造変化として力学エネルギーに変換され、分子機能が発現する。また、ロドプシンは、蛍光を発する特性を有し、光エネルギーにも変換可能である。このように、本領域における『発動分子』の定義(外部エネルギーを別エネルギーへ変えるもの)から、ロドプシンはまさに“発動分子”そのものと言える。このような背景のもと、本研究では、ロドプシンによる『光-->化学・力学・光』エネルギーへの変換機構の理解と光遺伝学的利用を行うことで、ロドプシン型『発動分子』の基礎学理構築を行うことを目的とした。
本年度は以下の成果を得た。 (1)『光→化学変換』:ここでは、特に色(吸収波長)と反応速度に着目し、その改変体を作成した。色の変化は励起可能な波長域を拡げ、光操作に新たなツールを提供することとなった。また、反応が早い分子は、分子機能の高速制御が可能となり、遅いものは、活性型中間体の滞留時間の延長により、1光子あたりの分子機能活性が大きくなることが期待される。 (2)『光→力学変換』:ここでは、タンパク質の力学的構造変化が生理応答に直結していることに着目し、これまでの成果を基盤に、ロドプシンで多様な力学変換分子の創成と生命機能操作(細胞死、神経制御など)を行った。 (3)『光→光変換』:一部のロドプシンが、高発光性を示すことを明らかにし、さらに網羅的変異導入による高発光化にも成功した。さらに、動物個体において閾値以下かつ高速(ms)の膜電位センサーとして利用可能であることを実証した。これらのロドプシンは、従来のCa2+インディケーター型膜電位センサーに代わるツールとなることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多様なロドプシンの『光-->化学・力学・光』エネルギーへの変換機構の理解と光遺伝学的利用でインパクトのある成果をあげており、JACS誌1報,eLife誌1報,Sci. Rep.1報, Protein. Sci. 1報(Highlighted in this issue)を含む9報の原著論文を発表した。未発表のデータの取得も順調に進んでおり、5報程度を準備中である。これまで成果は領域内共同研究を含むものであり、さらに5件程度の共同研究が進展中である。このように本研究は、当初の計画以上に順調に進んでいるものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、計画以上に進展しており、今後とも引き続き本研究の柱である『光-->化学・力学・光』エネルギーへの変換機構の理解と光遺伝学的利用についての包括的な研究を進める。投稿中・準備中の成果についても、順次成果として発表できるように注力する。
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