研究領域 | 発動分子科学:エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 |
研究課題/領域番号 |
21H00412
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
新津 藍 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 訪問研究員 (10791064)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ペプチドチャネル / 分子動力学 / 蛋白質デザイン / 合成生物学 / 電気生理 |
研究実績の概要 |
本研究は天然の発動分子と言える電位依存性チャネルタンパク質に倣った生体発動分子として、電位依存的に開閉してイオンや低分子を透過できるde novo設計ペプチドチャネルを開発し、その構造ダイナミクスを分子動力学計算と一分子チャネル電流測定から明らかにすることを目的とする。2021年度は、事前検討で得られた電位変化をトリガーとしてペプチド会合数を変化させながら開閉するde novo設計αヘリックスペプチドチャネルについて、分子動力学計算を実施した。 計算システムとして、これまでの電流測定から予測されるペプチド10~13量体のバレル構造モデルを作成し、脂質二重膜に挿入した初期構造を準備した。これらのシステムについて、構造サンプリングの効率を上げるために高温での全原子分子動力学計算を行った。膜電位の効果を検討するため、外部電場なし、正・負の外部電場ありの条件で各1マイクロ秒の計算結果の比較をしたところ、電場なし・負の電場ありの条件では初期構造よりも少ない会合数のチャネルへの構造変化が起こるのに対し、正の外部電場のみ大きなポアを安定化する効果があることが示唆された。これは電流測定において正の膜電位において大きなポア形成が観測される結果と一致し、ペプチドの膜外領域の正電荷の寄与があると考えられた。これらの研究結果について学会発表を行い、論文投稿の準備を開始した。 次年度以降、計算結果から予測された構造変化メカニズムを基に膜外領域を含めた配列設計と電流測定実験を行っていくことで、計算の検証およびチャネルの会合数変化のコントロールが可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施を予定していた分子動力学計算はほぼ完了し、来年度からのペプチド設計の足掛かりとなる結果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの計算結果を元にして閉状態・開状態の構造を最適化するペプチドのアミノ酸配列設計を実施する。研究計画当初はペプチドの膜外領域の構造変化への寄与はほとんどないものと予測していたが、分子動力学計算からは寄与が大きいと示唆された。そこで新たな設計の方針として、チャネルの開閉を妨げることなく、開状態の会合数を一定にするようにもとのアミノ酸配列に変異を導入することに加え、膜外領域の総電荷を調整した場合のチャネル開閉への効果を検討する。導入した変異の構造安定性への寄与を評価するため、先と同様の分子動力学計算を実施する。計算と平行し、ペプチド合成・円偏光二色性スペクト、分析超遠心による二次構造と会合数の確認を実施する。また一分子チャネル電流測定によりチャネルの形成、開閉の有無を確認する。またチャネルの閉状態・開状態を安定化させる2のアプローチの補強として、S-S結合を介したより強固な固定化を検討する。
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