公募研究
モデル真核緑藻クラミドモナスは、2本の繊毛を使って泳ぐ。眼点で光源の方向と光の強さを感受し、そのときに細胞内の状態に依存して正または負の走光性を示す。これまでの我々の研究から、この「細胞内の状態」で最も強く影響を与えるのは細胞内活性酸素種(ROS)量であることがわかった。しかし、クローンであるはずのクラミドモナス野生株を培養して光刺激をした際、たとえば90%以上の細胞が正の走光性を示すときでも、かならず10%程度負の走光性を示す細胞がある。そして、光照射を20分ほど続けると、最終的にほぼ全ての細胞が遊泳方向を逆転させる。今回の研究では、この「最初から逆走する細胞がいること」「最終的にほぼ全ての細胞が逆走すること」をシンギュラリティ現象の一種と考え、その発生メカニズムと藻類にとっての生理的意義を解明することを目的として行った。令和4年度は、細胞内のH2O2の可視化を試みた。先行研究で開発されたセンサーのベクターを購入し、野生株細胞への導入を試みたが、残念ながら多様かつ多数の試行錯誤にも関わらず、観察に足る十分な発現量の株を得ることができなかった。これについては現在も試行錯誤を続けているところである。一方で、本領域の掲げるシンギュラリティ現象と思われる現象を見出すことができた。他の細胞に先行して正の走光性を示す細胞がなんらかの化学物質を分泌し、他の細胞の正の走化性を誘導している可能性が見出された。この成果を見出しつつあるところで藻類培養インキュベーターが故障したため、課題を繰り越した。令和5年度は、インキュベーターの修理後、走化性現象の再検証を行った。その結果、強光ストレスを受けている細胞が誘引物質を分泌していることが判明した。従来走光性だと考えられていた現象の少なくとも一部に走化性が含まれていることを示唆する。今後この走化性誘導物質の同定を目指す。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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