公募研究
実験動物であるマウスを低温環境で給餌を一時的に行わない絶食条件にすると、能動的低代謝を示し体温が室温にまで低下する。この低代謝状態を休眠と呼ぶ。これまでの申請者の研究から、この休眠導入のタイミングは絶食を開始するタイミングが明期か暗期かに関わらず、暗期の後半から明け方にみられる事が分かってきた。つまり、低温・絶食により何らかの負債が体内で蓄積し(休眠負債と定義する)、その条件で生体が示す特定の時間がくると休眠に入ることが可能になる。ここで生体の時間調節機構として概日時計が重要な役割を持つと考えられる。睡眠・覚醒などの生理機能の24時間のリズムを調節しているのが、この概日時計である。本研究では、低温・絶食により蓄積する休眠負債因子が作用する神経細胞と、概日時計により制御される神経細胞がオーバーラップする神経細胞群を、休眠を誘導するシンギュラリティー細胞とし、7千万あるというマウスの神経細胞の中から、その細胞と神経回路を見つけ出す。今年度は視交叉上核の活性化により、日内休眠が抑制されることを同定した。また時計遺伝子欠損マウスでは、日内休眠のタイミングが一日の特定時間に見られなかった。この事は、日内休眠のタイミングが概日時計により調節されている事を示す。さらに免疫組織化学的手法を用いて、視交叉上核の活性化により、抑制される脳領域を同定することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
視交叉上核の光操作により、日内休眠を調節する下流の脳領域を同定できたこと、光抑制ツールを用いた神経活動操作がスムーズに導入できたため。
今年度同定した、日内休眠のタイミングを調節する候補脳領域の中から、実際にその調節を担う分子の同定を試みる。分子の同定ができたら、細胞腫特異的な神経活動操作や神経トレーシングを行い、神経回路を明らかにする。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Frontiers in Neuroscience
巻: 15:808754 ページ: 808754
10.3389/fnins.2021.808754
Journal of Biological Rhythms
巻: 36(6) ページ: 575-588
10.1177/07487304211047937
Scientific Reports
巻: 11:19240 ページ: 19240
10.1038/s41598-021-98532-5
巻: 15:735007 ページ: 735007
10.3389/fnins.2021.735007
Nature Communications
巻: 2.697222222 ページ: 3164
10.1038/s41467-021-23301-x
巻: 15:650154 ページ: 650154
10.3389/fnins.2021.650154
https://daiono14.wixsite.com/circadianrhythm