研究領域 | シンギュラリティ生物学 |
研究課題/領域番号 |
21H00424
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三木 康嗣 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60422979)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / 酵素 / プローブ / 蛍光 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、2021年度において(1)がん幹細胞検出用分子プローブのコントラスト向上、(2) がん幹細胞と正常細胞の幹細胞を区別するためのdual応答性分子プローブの開発、の2点に取り組んだ。 本課題申請時に開発していた幹細胞で過剰発現するアルデヒド脱水素酵素1A1(ALDH1A1)に応答し発光する分子プローブC5S-Aは、がん細胞群に含まれるがん幹細胞の検出に有効であったが、通常のがん細胞とのコントラスト比があまり高くないという問題点を抱えていた。C5S-Aに含まれる発光のON-OFFを司る官能基周辺の立体障害を調節することにより通常のがん細胞において発光量を極端に低減できることを見出した。がん細胞を用いてC5S-Aとのコントラスト差を調査したところ、約3倍改善されたことが示された。 C5S-Aはがん細胞群中のがん幹細胞の検出には適するが、正常組織が混在する生体内では正常細胞群の幹細胞にも応答する可能性があった。本研究課題では、がん細胞において過剰発現することが知られるβ-ガラクトシダーゼに注目し、ALDH1A1に応答する部位だけでなくβ-ガラクトシダーゼに応答する部位も併せ持つヘミシアニン色素を設計・合成した。ALDH1A1に応答するだけでは発光しないが、さらにβ-ガラクトシダーゼに応答すると発光することを確認した。C5S-Aをがん細胞群、正常細胞群に作用させたところ、どちらの場合も幹細胞が可視化された。一方、開発した分子プローブを作用させたところ、正常細胞群では発光する細胞は存在しないが、がん細胞群では幹細胞のみが発光することを見出した。 本研究課題では、ビイソキノリンを母体とするプローブの開発を目指した。現在イソキノリンを含む類似の分子プローブの創製に成功しており、2022年度において酵素応答性を調査することで分子プローブとしての有効性を確認したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度当初立てた実施計画として、(1) ALDH1A1およびβ-ガラクトシダーゼに応答する分子プローブの創製、(2) ビイソキノリンを母体とする酵素応答性分子プローブの創製の2点を挙げた。研究実績の概要で示した通り、ALDH1A1およびβ-ガラクトシダーゼに応答するdual応答性分子プローブを開発し、期待通り正常細胞群の幹細胞には応答せず、がん細胞群に含まれるがん幹細胞のみを可視化することを明らかにした。マウスなどの組織においても機能するかどうか2022年度に確認する予定であるが、おおむね順調に研究が進んでいると言える。ビイソキノリンを母体とする分子プローブについては、イソキノリンを含む分子プローブの創製に成功している。当初目標に類した分子構造であり、その酵素応答性は2022年度に明らかにしたい。これらに加え、立体障害を利用したがん幹細胞可視化用分子プローブの高コントラスト化にも成功しており、研究は順調に進行していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に記載した通り、本研究課題はおおむね順調に予定通りの進捗であると言える。2022年度の実験計画に変更を必要とする事象もなく、2022年度交付申請書記載のとおり、研究を進められる状況にある。
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