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2021 年度 実績報告書

発生時計シンギュラリティ現象の解明

公募研究

研究領域シンギュラリティ生物学
研究課題/領域番号 21H00427
研究機関大阪大学

研究代表者

荻沼 政之  大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (50825966)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2023-03-31
キーワードシンギュラリティ / 発生時計 / ゼブラフィッシュ / ターコイズキリフィッシュ / 休眠 / 発生速度
研究実績の概要

動物の体は、胚発生時に各々の組織で細胞が正確なタイミングで分裂、分化、移動することにより形成される。胚発生の速度は温度、酸素濃度などの外部環境の影響を受けるが、例え環境変化によって胚発生速度が変動しても、各組織の発生スピードが乱れることなく、足並みを揃えて発生・成長を行い、結果、正常な個体が形成される。加えて、興味深いことに、実験的に胚に温度勾配を人為的に作り出して胚内の発生速度を一過的に乱したとしても、速度の乱れはすぐに解消され最終的に正常な個体が形成される事も知られている。つまり動物胚の内部には胚発生の進行度を正確に測る時計機構が存在し、その時間情報を指標に発生速度をコントロールしていると考えられるがその分子実態は不明のままである。我々は最近、分泌ホルモンであるビタミンDシグナルが発生速度を制御する可能性を見出した。そこで本研究は胚が透明であり細胞内の分子挙動から組織形成、胚全体での発生過程を同時に観察する事ができる小型魚類モデルである、ゼブラフィッシュと発生速度が完全に0になる休眠を行うターコイズキリフィッシュ(以下キリフィッシュと略)を用いて、ビタミンDなどの速度コントロール因子を分泌する発生時計司令塔を同定しそれを介した細胞、組織、全体の速度同調機構(発生時計シンギュラリティ現象)を解明する。本年度は、ビタミンDの活性をモニターするレポーターフィッシュの作成し、このようなレポーターの活性を細胞レベルでリアルタイムで追跡できる実験系の立ち上げに成功した。さらに、当該領域の市村博士と共同でAMATERASを用いてターコイズキリフィツシュの休眠胚をまとめて40個以上同時観察することに成功し、集団を介した新しいシンギュラリティ現象が起きている可能性も見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

速度コントロール因子であるビタミンDの活性を追跡できるレポーターフィッシュの作成に成功し、またこれらをリアルタイムで追跡できる実験系の立ち上げに成功した。さらに、当該領域の永井博士の研究室の福島博士と共同研究し、細胞内代謝と相関する細胞内温度を可視化するレポーターフィッシュの作成にも着手した。また、当該領域の市村博士との共同研究によりAMATERASを用いて発生速度が0になるターコイズキリフィツシュの休眠胚の詳細撮影にも成功し、新しいシンギュラリティ現象が起きている可能性も見出した。このように領域内の共同研究を積極的に進行し、自身の研究を大きく発展させることができた為。

今後の研究の推進方策

計画<1>発生速度コントロール因子の同定と発生時計シンギュラリティ現象の解明。発生速度が最も大きく変化するキリフィッシュの休眠に注目し、発生速度を制御する分泌性因子(速度コントロール因子)の全貌を明らかにし、それを分泌する発生時計司令塔細胞を同定する。次に発生時計司令塔細胞における速度コントロール因子の分泌量をGAL4-UASシステムや光遺伝学によって改変した胚、胚内の発生速度を乱した胚における細胞、組織、胚全体の速度変動、速度同調過程をAMATERASを用いて同時にかつ漏れなく調べ事で、発生時計シンギュラリティ現象を解明する。

計画<2>速度制御分子機構の解明。計画<1>で同定した速度コントロール因子がどのように細胞内の発生速度を制御するかを解明する。現在、速度コントロール因子であるビタミンDが細胞内温度を制御すると予想しており、今後、当該領域の永井研究室の福島博士と共同で細胞内温度を可視化できるレポーターフィッシュの作成を解析を行う。

計画<3>新しいシンギュラリティ現象の解明。前年度までに、当該領域の市村博士と共同でAMATERASを用いて発生速度が0になるターコイズキリフィツシュの休眠胚をまとめて40個以上同時に、細胞レベルから集団レベルで観察する系を立ち上げることに成功した。今後は、休眠に移行する過程、休眠過程、休眠から覚醒する過程を詳細を解析することで新しいシンギュラリティ現象の解明を目指す。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Integration of Energy Metabolism and Developmental Signaling During the Vertebrate Embryogenesis~Rediscovery of Child Model~2022

    • 著者名/発表者名
      OGINUMA Masayuki
    • 雑誌名

      Seibutsu Butsuri

      巻: 62 ページ: 36~38

    • DOI

      10.2142/biophys.62.36

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] プログラムされた細胞内酸性化(Programmed Cell Acidification)2022

    • 著者名/発表者名
      荻沼政之
    • 学会等名
      第4回冬眠休眠研究会
  • [学会発表] ~代謝の視点から生物が造られる神秘に迫る~ 胚発生におけるエネルギー代謝経路の役割は 単純なエネルギー産生だけでない2021

    • 著者名/発表者名
      荻沼政之
    • 学会等名
      第61回 生命科学夏の学校
  • [学会発表] 生命活動休止システム「休眠」の分子基盤と意義の解明2021

    • 著者名/発表者名
      荻沼政之, 西田萌那, 石谷太
    • 学会等名
      第 94 回日本生化学会大会、シンポジウム、人生100年時代の「老い」を考える
  • [学会発表] 生命活動休止システム「休眠」の分子基盤と意義の解明2021

    • 著者名/発表者名
      荻沼政之
    • 学会等名
      モデル生物代謝研究会
  • [学会発表] プログラムされた細胞内酸性化(Programmed Cell Acidification)2021

    • 著者名/発表者名
      荻沼政之 、西田萌那 、石谷太
    • 学会等名
      生理研研究会 極限環境適応 2021
  • [学会発表] 生命活動休止システム「休眠」の分子基盤と意義の解明2021

    • 著者名/発表者名
      荻沼 政之、西田萌那、小神野 翔平、阿部 耕太、茂木 千尋、Devatiarov Ruslan、 …
    • 学会等名
      第44回 日本分子生物学会年会

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公開日: 2022-12-28  

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