免疫系は、同システムが内包する自己反応性リンパ球の制御不全によって個体生存が脅かされるという危険性を有している。従って、これら細胞がいかに抑制的に制御されているかを理解することが重要である。本研究においては、これら自己反応性リンパ球の動態を解析するという側面から同リンパ球の制御の解明を行った。研究代表者は、これまでに脱メチル化酵素TETをB細胞特異的に欠損させることにより自己反応性B細胞の活性化を引き起こし、それにより、CD4陽性T細胞の自然発生的な活性化が生じることで、自己免疫疾患が誘導されるマウスモデルを樹立している。同モデルをT細胞活性化レポーターマウスと組み合わせることで、自己反応性CD4陽性T細胞の動態解析を実施した。このモデルにおいて、B細胞の活性化後、一週間程度で、コントロールと比較し、レポータータンパク質を発現するCD4陽性T細胞の割合が3倍程度増加し、さらに、その後の時間経過に伴って、さらに増加することが明らかになった。これらレポーター陽性T細胞には、Foxp3陽性制御性T細胞と非制御性T細胞が含まれており、これは、病原性自己反応性T細胞が、自己反応性B細胞によって活性化されることを示唆していた。また、これらレポーター陽性T細胞は、B細胞領域及び、濾胞外周辺領域に局在していた。これは、自己反応性B細胞によって活性化されたT細胞が増殖し、積極的にB細胞領域に遊走することで、さらにB細胞を活性化させる可能性を示唆しており、このフィードフォワードループが、自己免疫反応の増幅に寄与していることが考えられた。また、濾胞外周辺領域における局在が、自己免疫反応の制御にいかに寄与しているかについては、今後明らかにすべき課題である。
|