我々は試験管内で発生過程を模倣できるオルガノイドを用いて、均質な細胞集団からパターン化された臓器構造が自律的に形成される試験管内モデルを確立した。このモデルをタイムラプス観察することで、オーガナイザーと呼ばれる少数の細胞集団が、各オルガノイドにおいて、初めはランダムに分布しているが、時間経過とともに次第に一箇所に集合することが、この自発的なパターン形成をもたらすことを見出した。この自発的なオーガナイザー細胞集合のメカニズムとして、細胞間接着力の差異による細胞ソーティング機構が示唆された。すなわち、オーガナイザー細胞同士の細胞接着が他の細胞同士、あるいはオーガナイザー細胞-非オーガナイザー細胞間の細胞接着よりも強いことで、オルガノイド内にランダムに分布していたオーガナイザー細胞同士が、外的なガイダンスなしに、自律的に一箇所に集合することが示された。さらに、シングルセルRNA-seq解析によって、オーガナイザー細胞特異的な細胞間接着因子を同定した。この遺伝子をノックアウトすることで オーガナイザーの局在化が障害されることを確認した。以上のことから、オーガナイザー細胞で特異的に発現する細胞間接着因子によって、オーガナイザー細胞間においてのみ強い細胞接着が引き起こされ、その結果としてオーガナイザー細胞がオルガノイド内で一箇所に集合し、オルガノイドの自律的なパターン形成が達成されることが明らかとなった。
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