研究領域 | シンギュラリティ生物学 |
研究課題/領域番号 |
21H00439
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
竹馬 俊介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (50437208)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / エピトープ / T細胞 / T細胞活性化 / 新規マウスモデル |
研究実績の概要 |
自己免疫疾患は、自己抗原を認識するごく少数のリンパ球(リーダー)によって開始され、抗原タンパクの新たなエピトープや別タンパクを認識する、より多数の細胞(フォロワー)が活性化し、やがては抗原非特異的な炎症へ移行して起こると考えられる。しかしながら、長期間にわたって徐々に起こる「抗原性の広がり」と、最終表現型としての自己免疫疾患発症との関連を観察することはきわめて困難である。本研究では、限られた特異性を持つリンパ球によって自己免疫反応を惹起し、発症に至るまでの「抗原性の広がり」を観察することを試みる。疾患発症・非を規定する、自己反応性細胞の、数の境界点を探索することを目的とする。 体内のわずかな自己抗原に反応して活性化したT細胞を検出するため前研究期間に作出したレポーターマウスは、レポーターとして用いた蛍光タンパクの発現量、感度が低いことが問題であった。この点は本年度、励起光として561nMのレーザーを導入する事で解決できた。また、このマウスを既存のレポーターマウスと交配し、T細胞の初期活性化と効果細胞への分化を試験管内で連続的に検出する事が可能となった。当該レポーターマウスを用い、自己反応性T細胞を検出する第一歩として、まずは、マウスに既知のモデル抗原を投与し出現するレポーター陽性細胞の解析を行った。抗原ペプチドを免疫したマウスでは、ex vivoでレポーター遺伝子の発現が見られ、さらにこの脾臓細胞を同じペプチドで再刺激するとレポーター陽性細胞の増加が見られた。よって、レポーター遺伝子の発現を指標に抗原特異的なT細胞の検出が可能となった。また、このように増幅したレポーター陽性細胞をFACSでソーティングし、RNAシークエンス解析を行うと、異なった免疫法においてT細胞に起こる特徴的な遺伝子発現パターンを検出する事が出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①レポーター遺伝子発現の検出が改善したこと、②少なくともモデル抗原の免疫によってレポーター陽性細胞の検出ができる様になった事、③これらの細胞のRNAシークエンス解析が可能となったことで、自己反応性T細胞の検出へ前進が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
がん免疫、自己免疫の実験系でレポーター陽性細胞が出現することを確認しており、これをソーティングして微量RNAシークエンスやシングルセル解析に供することで、抗原レセプターの配列を決定したり、細胞の活性化度、分化度を調べる。また、領域が提供するAMATERASによって抗原特異的T細胞の活性化検出を試みる。
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