研究領域 | シンギュラリティ生物学 |
研究課題/領域番号 |
21H00445
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
石原 美弥 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 医用工学, 教授 (30505342)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光イメージング / 超音波イメージング / 蛍光タンパク質 / 色素タンパク質 / 分光(スペクトル) / in vivoイメージング / 蛍光量子収率 / 自家信号 |
研究実績の概要 |
光で撮像対象を特定し、撮像対象で発生した超音波で位置情報や形態情報を取得するのが光音響イメージング技術である。シンギュラリティ生物学で追求する、極めて稀にしか起こらない少数要素のイベントへのアプローチに、光音響イメージングを適用することを目的として、光音響顕微鏡システム構成を改良した。具体的には、光音響画像と蛍光画像の同時取得と、画像撮像範囲の制限があるものの高速撮像を可能とした。 新学術領域内の共同研究として、領域計画班の研究グループから受領したサンプル試料を対象に光音響画像を取得した。培養細胞に発現している蛍光タンパク質の2次元光音響細胞画像の報告はこれまでされていない。このため、光音響画像の撮像条件を探索し、取得したデータの信号処理と、画像再構成を可能にする必要がある。本研究では、全ての測定条件とそれを満たす要素技術の仕様、データ処理や画像再構成手法を検討した結果、2次元光音響蛍光タンパク質発現細胞画像を取得することができた。1種類の蛍光タンパク質が画像化できるようになると、吸収波長(スペクトル)の異なる場合、モル吸光係数や、蛍光量子収率が異なる場合でも、画像化できる条件を容易に探索できるようになり、マルチカラー化、3次元画像化も可能となった。深さ方向の情報が得られることが光音響イメージングの強みであるので、2次元画像から3次元画像所得が可能になるように、さらに光音響顕微鏡システムを改良し、スフェロイドを対象とする画像が取得できることを確認した。これにより in vivoイメージングへの可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新学術領域「シンギュラリティ生物学」に参加している研究者と、技術面と生物学的アプローチの両面で交流が出来ている。生物学的側面における研究交流では、マルチターゲット、すなわち、複数の因子を同時に測定する重要性が明らかになりつつある。その過程で、シンギュラリティ生物学で追求する、極めて稀にしか起こらない少数要素のイベントをイメージングデータでアプローチするには、光音響イメージングでは、自家信号と色素タンパク質(後述)信号の両方を測定して組み合わせるという着想や方向性が妥当であることが確認できた。技術面では、トランススケールスコープAMATERASで実現している性能とそれを具現化するシステム構成について、詳細な理解を深められた。 蛍光量子収率が高い蛍光タンパク質は、低いのと比べて、高輝度な蛍光画像が取得できるのに対して、蛍光量子収率が低いほど光音響信号発生効率が高い。この蛍光量子収率が低い、あるいは蛍光を発生しない場合を色素タンパク質と総称し、光音響イメージングの対象とした。 光音響イメージング技術の進展としては、HeLa細胞に発現している種々の色素タンパク質を画像化できるようになり、マルチカラー化も可能となった。加えて、システムとして高速に画像を取得できるように改良したことで、アプリケーションである生物学的側面の研究者との交流で、稀なイベントの可視化に向けて議論が進んだため、概ね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
光音響顕微イメージングシステムで、何をどこまで可視化できるのかを明示できるようになることを目指して、新学術領域「シンギュラリティ生物学」に参加している研究者からの様々な撮像対象を早急に着手する。光音響イメージングでシンギュラリティ現象を捉えるための足掛かりとして、マクロなシステム全体(臓器や全個体)をミクロな精度で計測・解析するというシンギュラリティ生物学のコンセプトに基づいて、3次元の空間軸と時間軸を合わせた4軸のうち、どの軸で不連続点を観察するのが光音響イメージングの利点なのか、その際には、どのような光音響イメージング条件になるのかを把握し、生物学的側面のニーズと照らし合わせたい。加えて、トランススケールスコープAMATERASとの親和性について、継続的に検討する。
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