研究実績の概要 |
本研究では、過去を懐かしく感じる理由の因子構造を明らかにし、その理由が思い出す年代によって異なるかを明らかにすることを目的とした。まずweb調査1では、高齢者(n=450)を対象として、出来事回想課題(Sedikides 2015)を用いて懐かしい記憶を思い出した後に、その出来事が懐かしいと感じる理由を自由記述で回答してもらった。その後、自由記述データに対して内容分析を行い、懐かしさの理由リストを作成した(「大変だったが一生懸命頑張った」など43項目)。次に、web調査2では、高齢者を思い出す年代(0~12歳, 13~18歳, 19~29歳, 30~49歳, 50歳~)で群分けし(n=1,000, 各群200)、その年代における最も懐かしい記憶を出来事回想課題を用いて回想した後に、懐かしさの理由リストがどの程度当てはまるかの評定(6段階)を実施した。因子分析の結果、過去を懐かしく感じる理由として7つの因子(困難の克服, ポジティブ, 自己形成, 無邪気, 感情の揺らぎ(ネガティブからポジティブ), 独自性, 転機)が抽出された。さらに各因子の因子得点を思い出した年代で比較した結果、「困難の克服」因子の関与は幼少期や高齢期に比べ20~40代で高い、「無邪気」因子は幼少期をピークにその後減少していく、「ポジティブ」因子の関与は年代による違いはないなど、過去を懐かしむ理由は思い出す年代によって異なることが明らかとなった。
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